モーション・グリーン

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楊令伝 第二十一回感想

 己を取り戻し  想いを伝えて  眼前に見えるは、無限の空。  最期の双鞭、数多を切り裂き  慟哭の幻王、羅刹のごとし・・・  ○さらば呼延灼  予想はしていましたが、やはり衝撃は大きかった。まさに呼延灼を雄々しく逝かせるための第二十一回だったと言っても過言ではない、それほどの溜めに溜めた内容だと思います。  やはり、組織の中での役割、果たすべき勤めが呼延灼を変えていたのですね(これに関して言えば宣賛らも同様ですが)解き放たれたことで前作10巻での戦い方のような、豪放で勇敢で、それていて巧みな戦いをする勇将・呼延灼が最期の最期で見られてよかったのかなあ、と。  それだけに北方先生、粋な最期を演出してくれました。5000騎をたった一人で食い止めるだなんて、貴方は燕人張飛かい(笑)それでいて馬から落ちず、傷だらけでボロボロなことにすら気が付かない状態で逝った。息子に想いと、名字と、双鞭を託して(双鞭に関しては言い切れませんでしたが)  戦う姿だけではなく、若手の将校に大事なことを伝えるシーンも秀逸。  特に花飛麟への言葉が胸がつまった。  「いまおまえに付き合ってくれる人間がいるか。死ぬと決めて、それでは俺も一緒に、と言ってくれる人間が」  花飛麟からすれば死ぬ時は一人で、周りを巻き込まないという意味で言ったんだろうし、死なないという自信もあったのだろう。でも、同志達から見ればそれは花飛麟の力を認めているということで、‘花飛麟’という存在であり人間(友)を認めている、ということにはならないのだ、ということを言いたかったのではないだろうか。目に見える力や才能が全てではないということを。  自分(管理人)自身に当てはめてみて、呼延灼の言葉が素直に鋭く突き刺さったと感じています。じゃあ、どうすればいいのかまではわかりません、花飛麟と一緒に、あるべき他者との交わり方について考えていきたいと思います(゚Ω゚;)  呼延灼の最期に比べて趙安は、ややあっさりしていたかもしれません。が、それまでの趙安視点は、穏やかで固く、それでいて不屈。非常に好感が持てました。危険を察知して退却した時点で生き延びて欲しかったという想いが残るくらい。呼延灼が炎のような烈風なら、趙安は絶え間なく吹きつづけるつむじ風のような、そんな印象でした。  童貫の帝(徽宗)に対する気持ち、国(宋)に対する気持ちを、結果として趙安が代弁したことで、童貫の変化の奥因が見えてきたように思います。童貫自身も明確な思考の流れを語ったわけではないだけに貴重でした。  趙安視点の中では、特に雲を見ていた兵士に趙安が語りかけるところはよかったです。一気に視野が広がり、心の中に爽やかな風が吹いた気がしました。  鄭応や鍾玄が自分の直接の上官を語るところもそうでしたが、片方の視点だけではなく、下から横から様々な視点から見なければ、その人の姿って見えないんですよねえ。  趙安の判断を曇らせた対金対策。実は梁山泊側の呉乞買への恫喝のみで推移しているところが、国という固定組織のおもしろいところなのかもしれません。しかも、梁山泊側から動いたのは公孫勝のみ(笑)史実ではこの後、禁軍側が危惧したとおり金は宋へ進行してきます。果たしてどのタイミングで仕掛けてくるか。    ○震える楊令  ついに現れた、楊令の弱点。幼き頃の経験が、まさか今になっても楊令の中で消化しきれていないとは。  瘧のような震えの状態を、もっとじっくり描いてもらいたかったなあ。まあ、いずれ張平か楊令視点で話してもらえると思うんですけどね。特に楊令に関しては自分の中の自覚していなかった部分に関してどう考え、どう捉えていくかで童貫戦の流れが変わりかねない。  結果として、その前の少数突破と合わせて楊令に対する恐怖心を童貫軍に植え付けられたことにはなりましたが(兵達の間に伝わる楊令のイメージ像が、妙に妄想しすぎて、妙にリアルな広がりを見せていて興味深かった)  余談ですが楊令が戦死の報を受けた時から呼延灼に対しては敬語に戻っていましたね。細かい事ですが、何か胸に来るモノがあります。棟梁として言い方1つにしても、気にしなければならないのでしょうか・・・  さて、今月号の童貫はあまりに超然としすぎていて、すべて後手に回っていましたね。あるいは戦略に裏打ちされたこれまでの童貫とは、明らかに違う気持ちの上での劣勢。結果として引きづり出された形で姿を現すことになりそうですが・・・  その一方で羌肆に、楊令の心を掻き乱すようなことをやれと命じていましたね。青蓮寺なのだから白い犬を楊令の目の前で殺すぐらいはやるかもしれませんな(怖)それ以外でも、親と子の別れの現場を目撃したとき、(例えば)童貫がかつての楊志のような振る舞いをしたとき、どうなってしまうのか。妙な緊張感が生まれてしまいましたね・・・  ○自分が自分であれ  鄭応~鍾玄の視点の流れは、久し振りに文章に爽やかな印象を受けました。やはりプロフィールや内面が描かれると印象度が違いますね。特に鍾玄は好感度が非常に上がりました。ちょっと腰の軽い李英とのかけ合いで存在感をグイグイ出してます。欲を言えばその後の戦いにも顔を出して欲しかった・・・  

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