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【読書感想】“最高”の理不尽を噛みしめよ!「信長を生んだ男」感想 

敬愛する作家・御大こと北方謙三は、志半ばで死んでしまった、作品の登場人物への死なせ方に関する読者の質問に対し、こんな回答をしたことがある。

(ちなみに、私、この現場にいたので、光景をよく覚えてます)

 

勝利と建設の観念を具現化した人物が楊令だったんですよ。病で死ぬ、戦で流れ矢に当たって死ぬ、岳飛と正面衝突して斬られる、というような選択肢もいろいろと考えていたんです。しかし、観念の消滅というものがどこから来るのかというと、理不尽の消滅なんですね。

 

www.shueisha.co.jp

 

議題の人物:楊令は民にとっての理想国家・梁山泊建設に邁進し、反対勢力を次々に撃破していった。

そして最後の敵対勢力・南宋に肉薄し、事実上の総大将・岳飛をあと一歩の所まで追い詰めながら、衝撃の最期を迎えることになる。

それは、若き英雄の早すぎる結末。

しかもそれは、理不尽、としか言いようのない出来事だった。

 

北方御大の魅せた、漢の生き様。

何者にも予想も備えも出来ないラスト。

それでいて、不慮、残念、無念、その他どの言葉を当てはめても陳腐になってしまう光景。

 

そう、その名は 理不尽。

 

この言葉でしか、表現できないのだ。

 

だからこそ、楊令はその足跡と最期を、他の仲間達や読者の記憶に刻みつけることになった。

生き様は死に様から。まさにハードボイルド作家の真骨頂、というべきか・・・

 

 

一方で、作家は物語において、いかなる展開を、いかなる結末をも作り出すことが出来る。

突然の事故も、

不慮の死も、

不可解な結末も、すべては作家の決断一つ。

 

「予想だにしない」とか「衝撃のラスト」と唱われていても、

 

“まあ、そう作者が作ったんだからねえ”

 

と身もふたも無いことを言ってしまえばそれまでだ。

 

例え展開に理不尽さがあったとしても、

向けられるのは作者へのツッコミやクレームであり、物語(もしくは物語内の人物や世の中)への理不尽を感じることは、少ないのが現実ではなかろうか。

 

 

そんな味もそっけもない考えが、本書を読むと吹っ飛んでしまう。

そう、信長を生んだ男だ。

 

信長を生んだ男

 

本書は、冒頭で傑作の匂いを感じ取ることができる。

 

矢を放つ信行。

 

一読上では、尾張の風景が詳細に描かれているだけだが

伏線のようで、

ただの一風景のようで、

それでいて信行のすべてを表現した、素晴らしくも残酷な運命を暗示させるシーンが後追いで目の前に拡がってくる。戦国時代に詳しい方なら、本作の主人公・織田信行の史実ラストと重ね合わせ、無情の匂いを噛みしめられるだろう。

 

だが、本作は、これまで描かれてきた、どの作品とも違う信行・そして彼の兄 織田信長の姿を描いていく。

 

聡明でありながら、どこか気にしながら、それでいてお互いがお互いの中に、本当に欲しいものを求めていく。

家としての葛藤や分裂、愛憎に巻き込まれながら、いつしか二人はホンキで戦い、そして信行は、生涯信長を支えることを誓う。

 

 

信長を生んだ男

信長を生んだ男

 

 

 

ここまでで、私は正直、史実エンド以外の結末を心から願った。

 

憎まれ役を引き受けて死ぬ信行

死んだふりをして、名を変えて信長を支える信行

 

どれでもいい。

ここまで見事にはまった兄弟がまだ割かれる姿は見たくない

母の擁護にほだされて、偉大な兄・信長に逆らった、愚かな信行がこの後描かれるわけがないのだ、と。

 

 

だが、著者・霧島氏は“最高”の理不尽を用意していた。

 

作り手のさじ加減と知りながら、読んでいて思わず天を仰いだ私は、この世界にどっぷり入り込んでいたのだろう。

 

“最高”の理不尽を自覚した信行は、ある計画を実行に移す。そしてそれが、悲劇へとつながっていく・・・

 

 

そして、本書では、もう一つ

戦国ファンが卒倒するような結末をもう一つ用意している。

それは、史実を尊重しながら、物語の人物自身が物語を創りだしていくような、躍動感。

 

まさしく“史実”を飛び越えた作品がここにある。

 

予想だにしなかった帰蝶のラスト

そして“最高”の理不尽な人生を用意された信行

 

その二人から“生まれた”信長を、是非噛みしめて欲しい。

 

全体的に暗い話しではあるが、信行の側近・蔵人と権六のおとぼけトークが良い味出している。人間として親近感持った権六は初めてかもしれないなあ。

 

 

信長を生んだ男

信長を生んだ男

 

 

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