モーション・グリーン

ブログ開設13年目!今年も「紡ぐ」発信を目指す読書・アニメ・特撮感想ブログ。400冊読破を目指して今日も読んでます。

〈変質した理想の果て〉読書感想:『走狗』

 

 

走狗

 

 

伊東さんの西郷三部作、その二作目。

実はこの作品が他の二作品をつなぐ、超重要な一作となっている。

 

『飛ぶが如く』で、その特質すべき性格と役割で、知名度を一気に上げた川路利良。

征韓論で対立する西郷と大久保、どちらにも組することなく、また西郷に従って多くの旧薩摩藩士が鹿児島へ戻る中、大久保について政権の中枢で権力をふるった男。

 

今作では、彼から見た西郷と大久保との姿を描いた物語となっており、西郷はもちろん、大久保の人間性や苦悩も描かれている。

二人が際立てば際立つほど、冷徹に事態を収拾していく川路の特異性が浮き彫りになる。とても不思議なテイストの作品だ。

 

さらに、今作は川路の人間性と、理想の変容が大きなポイントとなっており、終盤の大どんでん返しにもつながっていく。

 

身分が低く、武勇だけで成り上がろうとしていく川路。

彼は西郷や勝との出会い、そして大久保の信用を得ることで、歴史の表舞台に立ち会っていく。

だが、純粋な功名や、西郷や大久保への献身的な働きをしていく中で、次第に彼の中に生まれてきた野心は、いつしか当初の思いを黒々と塗りつぶしていく。

 

多くの血を流して建てられた明治政府の中で、川路は西郷を追い出し、反乱分子をあぶり出し、西郷を死に追いやり、そしてその果てに自分が、変質した夢を必死に護ろうとしていたことに気付くのだが・・・

 

川路が失脚する直接の原因となる大久保暗殺について、伊東さんはこの作品で大きな謎に挑んでいる。

今作で明らかになるその謎は『西郷の首』での謎にもつながっていく。

なので、私のように(苦笑)この作品を後で読まず、『武士の碑』→『走狗』(本作)→『西郷の首』と順番通りに読むことをオススメ。

 

 

川路が単なる一武士から権力の権化まで登り詰め、墜ちていく姿は、実権を握っているようで握られていた、なれの果て。

そこを容赦なく、最期まで緩めることなく(苦笑)描ききるあたり、権力は夢(理想)を変質させてしまう、という伊東さんの強いメッセージを感じる一冊だ。

 

走狗

走狗

 
走狗

走狗

 

 

にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村

 


読書感想ランキング