池田屋事件。
幕末の中で知名度抜群のこの事件、実は相当わかっていないことが多い。
本書の中で明らかになった、ということ自体が衝撃だった。
(正確には特化した研究がされてない)
明治になって、長州の中で「総理大臣になれる器を持った人物は?」と聞かれ、出てきた名前のほとんどがこの世におらず、しかも池田屋事件や禁門の変で亡くなった者ばかりだった、という逸話は(本当かどうかは不明だが)有名な話し。
それだけの逸材を失った事件、それだけで悲劇性を伴った衝撃的な事件のはずなのに・・・
その事件にきちんと向き合った著者が長い歳月をかけて世に送り出した1冊。
鍵となっている古高俊太郎の出生すら、実は不明点が多かったというのだから、これまで僕らが学んできたこととは何だったのか(涙)
古高の出生は序の口。
その他にも、事件直前に池田屋をたまたま出ていたとされる桂の行動の真相や、彼の考えの実態も、史料を紐解くと明らかになっていく。
さらには池田屋には、実際誰が来ていたのか?というそもそも論すら不明点があり、本書では限られた史料から、当日店内にいたメンバーと、その周辺にいて巻き込まれたメンバーを絞り込んでいく。
他にもこれまでの通説と異なる事実の数々が登場。
歴史研究の面白さと難しさ、通説の危うさを痛感する。
本書は新書としては異例の分厚さ。
実は僕は昔この本を流し読みしたことがあるものの、その分厚さに圧倒され、ほとんど頭に残らなかった(涙)晴れてきちんと読めて、ホッとしている。
そして、これでもまだまだ未開のところがあり、さらなる衝撃が今後待ち構えているかもしれない。
浮き彫りになっていく池田屋事件だが、色々な人たちの行動の大きな分岐点だったことは間違いない。
意外なところでは、坂本龍馬の池田屋事件時の居場所。そして、彼の京都住み家に、事件後家宅捜索がはいったという事実は大きな衝撃だった。
(しかも、この段階でお龍と相愛だったらしい)
龍馬はこの段階で既に、危機一髪だったようだ。