モーション・グリーン

ブログ開設14年目!今年も「紡ぐ」発信を目指す読書・アニメ・特撮感想ブログ。

読書感想:『布武の果て 第一回』(小説すばる 2020年 3月号 [雑誌]) ~ 時代が動くとき。商業都市・堺 生き残りへの道 ~

小説すばる2020年3月号

 

 

上田秀人さん新作が小説すばるでスタート。

舞台は戦国時代 堺。

鉄砲の材料や鉄砲をはじめとした重要品の取り扱いで飛躍的に発展した商業都市。

軍事力をも持ち合わせ、京都での争乱にも対抗できる勢力であり続けたこの地に訪れた転換期。

 

それは、足利義昭を奉じて上洛した織田信長。

 

未知の存在・信長と、弱体化したとはいえ大きな影響力を持つ三好一族。

堺はどちらにつくべきか。

 

今井彦八郎(宗久)と魚屋興四郎(千利休)による生き残りの攻防が描かれている。

 

本文では早くも信長が登場し、取次役として秀吉も登場する。

 

自分たちの力をあてにし、状況を曖昧に判断しようとする納屋衆(堺商人により方針決定機関)が、信長上洛を機に割れていく様は、この先の堺を暗示しているようだ。

初回から波乱の幕開けとなっている。

タイトルからするに、物語は本能寺の変後の堺についても描かれそうだなあ。

戦国時代に最大の繁栄期を迎えた堺は、その後焼き討ちなどもあって次第に没落していく。 その変転について、がテーマになるのだろうか。

だとすると、あんまり取り上げられていない題材なだけに読むのが楽しみ。

 

言うまでもなく、当時の人間に未来を予測することはできはしない。

信長か三好か。

読み間違えれば破滅に繋がる、ヒリヒリした展開が続きそうだ。

 

 

 

小説すばる2020年3月号

小説すばる2020年3月号

  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2020/02/17
  • メディア: 雑誌
 

 

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読書感想:『剛心 第五回』(小説すばる 2020年 3月号 [雑誌]) ~ 広島に議事堂を作れ!沼尻奮闘記(笑) ~

小説すばる2020年3月号

 

 

できる男・妻木に振り回される沼尻奮闘記の回(哀)

 

呼び出されて広島行ってみたら、日清戦争で一時的に首都機能移転されるから、臨時議会議事堂を作れ、というとんでもプロジェクトが始まることに。

 

しかも東京と同規模のものを半月でつくれ、だと!

現地では人手も予算も材料もなく、しかも建設地も未定、という状態。

(建設地が決まってない、ってのが一番酷い)

良く言えばおおらか、悪く言えば現場任せの丸投げ体質がここでも発揮されてる(涙)

 

沼尻とメンバー・湯川が動き始めるが、そもそもの人員が確保できず。

そこへ妻木から呼び出され、あれやこれやの相談と命令と・・・

 

不満たらたらの沼尻。

だが、「僕らが作っているのは景色だ」と諭す妻木がかっこいい。

 

 

ここまですったもんだの東京都市計画、そこで培われてきた職人魂とリーダー才覚が一気に開花。 むしろ仕事しすぎてぶっ倒れるのではないか、と心配になる・・・

 

この他にも「クセのある人ほどいい仕事をする」「こだわりのない者同士で組んで作ったものは腑抜けた代物になる」など、今の時代にも通じる考え方には頷けるもの多し。 そして、効率ばかり求めて見失ってはいけないものを諭す、心を衝くセリフに胸が熱くなる。

 

次回でもう完成しそうな臨時議事堂、どうできあがっていくのか楽しみだ。

 

 

 

小説すばる2020年3月号

小説すばる2020年3月号

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  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2020/02/17
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読書感想:『塞王の楯 第八回』(小説すばる 2020年 3月号 [雑誌]) ~ 不落の誓い。匡介の脳裏に浮かんだ墜ちない城の姿 ~

小説すばる2020年3月号

 

 

絶対に墜ちない城への思い。

 

二度も落城の憂き目を見たお初一行

つく相手を間違えて没落した京極家

 

だからこそ、願い続け、今なお求め続けている。

陽気で、どこか上下隔てない大津の雰囲気、けどその中に、失いたくないという恐怖が見え隠れ。

 

今の状態なら大津城は持ちこたえられる。

でも、もし状況が変わったら・・・

 

夏帆と匡介の何気ない会話の中に、不安と希望が交錯する。

城が守るのは、城主や武士、兵士だけではない。

そのことを誰よりも知っている匡介だからこそ、夢と知りながら、求めていかないといけない。

これ、大きな伏線になりそうだ。

 

着実に完成へと向かう大津城を目にしながら匡介の脳裏に浮かんだのは“守りながら攻める”城の構想。

これが次世代の塞王のオリジナル要素につながりそうな一方で、盾と矛の境界線が曖昧になりそうな気も (どちらかというと“矛”側の理論に近づく)

 

 

守るために傷つける。

傷つけないために、墜ちない城で戦意を喪失させる、ってことではない、ということになるのか・・・

実現すれば、城を守る人間によって行く先が決まる作りになりそうな気配。

さて、この後控える大津城攻防では、どっちに転ぶかなあ。

 

それにしても匡介、失うのが怖いから守るものを持たない、ってお前は少年マンガ主人公か(笑)

 

 

 

小説すばる2020年3月号

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  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2020/02/17
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読書感想:『チンギス紀 第三十五回』(小説すばる 2020年 3月号 [雑誌]) ~ ケレイトのノラ息子がやらかした!混沌の草原にてテムジン×ジャムカ再会の時 ~

小説すばる2020年3月号

 

 

タルグダイ夫婦が草原を越えて金から南宋へ。

内実はともかく、見た目は老後の記念旅行(終末旅行にも見えてしまうが)。

ここまできたら小梁山行きそう。というか行って欲しい・・・

 

彼らがいなくなった草原ではマルガーシが覚醒。

母を殺した相手を切り落とし、野獣の如く大暴れして森の中へ。

これは北方サバイバルライフへ突入か、それとも子午山的な場所で生まれ変わるのか? どちらにしろ、子供も父も、これでしがらみから解き放たれた、という皮肉。

 

そして父・ジャムカはテムジンとの再戦!

その裏でケレイトのバカ息子がやらかして(怒)事態はまたまた混沌としてきた・・・

 

今後の戦いを掃討戦と位置づけてきたテムジン。

そのもくろみは外れたのか、想定内なのか。

 

物資をわざと残して退却する、もはやモンゴル民族の発想ではない。

経済的・物量的優位にたっているからこそ、取捨選択ができるという、余裕の対処。

実際、気がつけば動員兵力は3万になっていたしなあ。

 

そして水滸伝から侯真の孫が登場!

梁山泊で戦っていた祖父が英雄扱い、というところに、もうあの場所・あの時間はは歴史になってしまったのだな、と感慨深い。

 

そういえばアイツ、いつのまに結婚したんだよ(笑)

そして父(侯真からすると息子)が酒で死んで、親知らずになった孫。因果すぎるわ(涙)

 

 

小説すばる2020年3月号

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  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2020/02/17
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 最新第七巻、いよいよ3月発売!

チンギス紀 七 虎落

チンギス紀 七 虎落

  • 作者:北方 謙三
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2020/03/26
  • メディア: 単行本
 

 

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読書感想:『戦国大名と分国法』 (岩波新書) ~ 法から見える中世日本。戦国大名に求められたもの ~

戦国大名と分国法 (岩波新書)

 

 

応仁の乱終焉から、各地で有力者が自治に動き始めた戦国時代。

それまで領地をおさめていた大名の権威が失墜し、新たな存在がその地位につく。

戦国大名と後に呼ばれる実力者は、ときに周囲と同盟を結び、ときに領土を拡張し、わかっている者は内政にも力を注いだ。

そんな戦国大名を取り上げる際によく出てくる存在が法律だ。

 

自治を確立するために、決まり事を定め徹底させる。

分国法と表される法律は大名ごとに内容が異なり、考え方や特色を知るのに有効なツール、と見られていた時期があるそうだ。

 

ところが実際の分国法を見てみると、想像以上に形式も意味合いもバラバラ。

内容も法律なのか、指針レベルなのか、当主の愚痴なのかわからないものも・・・

 

後半の文書には愚痴が並んでいる結城家

当主が出すのではなく、家臣から「この決まりを守れ」と突きつけられた六角家

法律としては当時の最高峰のものを作り上げた今川

そして滅亡直前までバージョンアップした武田など、分国法から、当時の価値観がみえてくる名本。

 

タイトルだけみると難しそうな印象を受けるかもしれないが、清水さんのわかりやすくちょっと茶目っ気のある表現、そして何より必要なところだけ大胆に抜粋・要約した編集力が見事すぎて、分国法はもちろん紹介された戦国大名への愛着まで湧いてくる。

もちろん戦国大名好きが読んだら、ますます知的好奇心がかき立てられること、間違いなし。

 

ラストの織田や徳川、後北条などの有力大名になぜ法がないか、という理由にも触れており、衝撃の結論が述べられている。

 

目から鱗の見識を是非確かめて欲しい。

 

 

 

戦国大名と分国法 (岩波新書)

戦国大名と分国法 (岩波新書)

  • 作者:清水 克行
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2018/07/21
  • メディア: 新書
 
戦国大名と分国法 (岩波新書)

戦国大名と分国法 (岩波新書)

  • 作者:清水 克行
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2018/12/20
  • メディア: Kindle版
 

 

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読書感想:『今川氏研究の最前線』 (歴史新書y) ~ 日本で最も進んだ戦国大名、その実態 ~

今川氏研究の最前線 (歴史新書y)

 

 

「桶狭間で負けた名家」

「油断して首を取られたお歯黒大名」

織田信長飛躍の踏み台イメージから、今でも抜け出せない今川家。

 

だが、「海道一の弓取り」の名の通り、この家は当時の日本の中で間違いなくずば抜けた実力を持った大名だった。

検地や楽市制度、分国法など、最先端の施策を進めていたという研究も発表され、有識者の間での評価は巷とは全く異なるようだ。

 

その一方で、意外と研究が進んでいないということが、本書で明らかに。

これも、“敗者”の悲しさか(涙)

 

どうしてもイメージ・勝者先行になりがちな日本の歴史研究。

その中で、今川家にスポットをあてた研究本がこの1冊。さすがは洋泉社!

 

読んでみると、そもそもの今川氏系図に関する疑問や、国衆との関係、さらには内政や外交など、ほぼ全ての分野で未開拓のところがたくさんあり、まだまだ新しい発見の余地を感じる。

 

 

ただ、不明点が多いため、本書前半はストレスがたまるかも。

 

その後の中盤~後半は三河・尾張の領土攻防話しが中心。

今川視点でこの経緯を見るのは結構貴重だったので新鮮。

特に今川・武田・織田の勢力拡大と敵対の変遷が、信長の野望を彷彿とさせるバランスで成り立っていたことが書かれており、当時の境界線周辺領主の緊張感が伝わってくるようだった。

かなりマニアックな内容ではあるので、玄人以上の方推奨(笑)

 

今川氏研究の最前線 (歴史新書y)

今川氏研究の最前線 (歴史新書y)

  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: 洋泉社
  • 発売日: 2017/06/02
  • メディア: 新書
 

 

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読書感想:『幕末下級武士のリストラ戦記』 (文春新書) ~ とある武士の生ききった日々、苦難の新時代の乗り切り方を学ぶ ~

幕末下級武士のリストラ戦記 (文春新書)

 

 

歴史の教科書に載らなくても、心に響く生き様を示した人はたくさんいる。

 

かつて『武士の家計簿』という本で、(その当時は軽視されていた)“そろばん術”で我が家を立て直し、その能力を買われ明治の時代に躍進した武士を知ったときの“嬉しさ”を今でも憶えている。

 

変化の時代、多くの人が取り残され、輝けないまま歴史の闇に消えていく。

その一方で、足掻き続け、泥臭くても次につなげられた人もいる。

決して目立たなくても、かっこわるくても、その足跡が僕たちを突き動かす。

きっと本書『幕末下級武士のリストラ戦記』主人公・山本政恒は、今だからこそ知っておくべき人物だ。

 

将軍の陰武者をやり

幕末を生き抜き

徳川家静岡移転に伴い収入激減状態へ。

職を転々とした。

リストラもされた。

“武士の商売”をやって、家族を養ったこともあった。

そして最期は自分史に命を注ぎ込む。

 

とにかく何でもやった。

家族のため、生き残るため、徳川武士の意地を示すため。

決して大きく秀でた能力があったわけではないのだろう。

それでも、山本政恒の生き様は、困ったとき人間が選ぶために大事にすべきものを教えてくれる。

必死で新時代を生き抜いた姿は、幕末の英雄と遜色ない光を放っていたように思う。

 

江戸の食事情や着物、自分の趣味など一生を事細かに記載した自分史の内容も、リアリティにあふれ、それだけでも読み応えがある。

随所で書かれている直筆の絵も、遊び心があって、読者を和ませてくれるものばかり。

 

地味だけど示唆に富んだ新書。

読んで良かった。

 

 

幕末下級武士のリストラ戦記 (文春新書)

幕末下級武士のリストラ戦記 (文春新書)

  • 作者:安藤 優一郎
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2009/01/20
  • メディア: 新書
 

 

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読書感想:『ノルウェイの森 (上)』 (講談社文庫)~ 村上春樹代表作、不安定な青春の一ページ ~

ノルウェイの森 (上) (講談社文庫)

 

 

「僕は三十七歳で、そのときボーイング747のシートに座っていた」

村上春樹の代表作と言われる『ノルウェイの森』は、タイトルから想起される風景とは(ある意味)真逆の場所から始まる。

一文で、主人公の状態と場所とが端的に示されている、として、傑作の書き出しという声もあるらしいが、かつて読んだときはまるで気にせず読み進め、なんとなく読み終えた記憶がある。

 

あれからかなりの時を経て、ものすごい久しぶりに村上春樹の世界へ。

 

主人公・ワタナベ君をはじめとした登場人物の心情やあてどない心の動きを、直接的に表現せず、間接的に感じ取らせる書きっぷりが、今となってはじわじわくる。

感情移入しづらい登場人物たちの複雑さも

ちょっと(というか相当)まわりくどい言い回しも

生々しい(いやらしい?)描写も 改めてゆっくり読むと懐かしく、違った色合いをみせてくる。

 

かつての文学(純文学)は全てを文章にしなかった。

読者が文章を読んで情景を浮かび上がらせて、はじめて作品は読者のものとなっていたのかもしれない。

 

例えば、直子から待望の手紙がきたときのワタナベ君。

普通の小説なら、嬉しさや興奮の度合いを様々な表現を用いて表現しただろう。

この作品では、ワタナベ君がかつて直子と歩いた場所や道筋をなぞるように歩き続け、帰宅して直子の施設へ電話をして、その後出かける支度をしたという行動の過程を淡々と綴っている。

彼が本当に嬉しくてそれを持てあます、という状況だ。

 

読者が動作から察しなければ、ただの報告書のような味気ない文章。

でもそこに、不安定な青春の一ページがある。

昔の読者は、それが出来た。今も読めば引き込まれていく。

純文学の奥深さを再確認したシーンだったなあ。

 

そうなると今の文学って完成形を提示しすぎて説明過多なのかもしれない。

時代や読者の変化も感じ取りつつ後編へ。

純文学、再読の波来てるかも?

 

 

ノルウェイの森 (上) (講談社文庫)

ノルウェイの森 (上) (講談社文庫)

  • 作者:村上 春樹
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1991/04
  • メディア: ペーパーバック
 

 

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