モーション・グリーン

ブログ開設14年目!今年も「紡ぐ」発信を目指す読書・アニメ・特撮感想ブログ。

読書感想:『火天の城』 (文春文庫) ~無二の城がみんなを一つにした 城作り作品の決定版!~

 

火天の城 (文春文庫)

 

 

元々は「伊東潤の読書会」『もっこすの城』関連で読もうとしたのがきっかけ。

久しぶりに手に取って、読み始めた。

 

そしたら、面白すぎて1週間に3回も読んでしまった。

 

職人モノの作品を手掛けたら天下一品の山本兼一作品、その中でもチームワークとプロフェッショナル部門で代表作とも言えるのが、この『火天の城』

 

安土城の築城という、一大プロジェクトにあらゆる分野のプロが集結。

困難や挫折を乗り越え、みんなが前のめりに命を賭けた戦国の“プロジェクトX”

 

材料調達、唯一無二のデザイン、困難を可能にするアイデア、全てのワガママを実現させる現場監督術など、今に繋がる様々な難問を彼らは意欲に変えていく。

 

・城のデザインプレゼンでの「採用されなかったら腹切り宣言」

・材料探しに命がけの木曽探索

・父と子、なかなか伝わらない技術継承への思い

・信長の細かすぎる指示やムチャぶり

※と書きつつ、実は本作の信長はできそうなことしか命令しない。明らかに出来ないことは拒否されると引き下がる柔軟性を持っている。

 

忍びの妨害、作業場に潜むスパイ、随所に潜むトラブルや倒壊の危機。

とにかくいろんなことが起きる。

今なら誰かの責任にしたり、出来ない理由を探したり、待遇の改善を訴えるなど、現状の困難を嘆く雰囲気が漂うところだろう。

 

ところが、この作品の登場人物達は頭を抱えながらも前向きだ。

ときにライバルと協力し、ときに自説を曲げ、ときに励まし合い認め合う。

 

完成させる。必ず実現できる。完成させてやる。

 

自信とモチベーションが前提にある彼らからは、“明確な理由のない楽観さ”すら感じさせる強さがある。

そこにあるのは、自分の実力と現状を正しく分析し、無意味な悲観を抱かないこと。

 

過去の遺物となりつつある昭和の作品から、学ぶべきところはまだまだたくさんある。

 

他にも、ちゃんと意図を汲むヒアリング力や、資材より人の命を尊う心根など、彼らの姿勢が読み手に力を与えてくれる。

まさしく不朽の名作。

未読の方は是非読んで欲しい。

 

 

火天の城 (文春文庫)

火天の城 (文春文庫)

  • 作者:山本 兼一
  • 発売日: 2007/06/08
  • メディア: 文庫
 

 

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読書感想:『はぐれ鴉』 第三回(小説すばる 2020年 6・7月合併号 [雑誌]) ~仇敵の娘は美麗小町!使命か恋か、迷いの才次郎~

 

小説すばる 2020年 06・07月合併号[雑誌]

 

 

 

前回思わぬ裏切りによりボロボロのままの才次郎。

傷をひた隠しにしたまま臨むは仇敵・はぐれ鴉の娘、英里との戦い。

 

道場での一騎打ち、相手が女性とはいえ、ご近所じゃそれなりの腕前、とのことだっただけに片足がほとんど使い物にならない状況で勝てるのかよ、と思っていたけど。

やはり、死にものぐるいで鍛えてきた月日は田舎剣術を吹き飛ばすものだった。

剣術一心だったのは伊達じゃないなあ。

 

そして隠れファンが多い竹田小町。

なんと南蛮の血が流れているというのだから、この話しはやっぱり隠れキリシタンと関わりがあるに違いない。

 

で、戦いが終われば献身的な治療。

お酒飲んだり、花の話しをしたり、道場の運営についてのサポートを依頼したり。

それ以外の三バカや、田舎役人たちのことを思えば、目がいくのも無理なしwww

 

こんな因縁がなければ・・・

 

英里への想いが次第に膨れあがる才次郎。

ただ、別れはあっという間に。

まあ、これだけの美人、放っておくはずがない。

(見た目のことは、どこかで話題や騒動になりそうだけど)

 

文章きちんと読んでいくと、本人の一方通行とは言い切れない雰囲気。

そもそも仇敵・はぐれ鴉の真相がまだ明らかになっていないだけに、二人の関係もまだ終わらない、と思いたい。

 

そして次回、仇との対面を匂わせるセリフが!

 

小説すばる 2020年 06・07月合併号[雑誌]

小説すばる 2020年 06・07月合併号[雑誌]

  • 発売日: 2020/06/17
  • メディア: 雑誌
 

 

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《この気持ちをわかってくれるのは、たった一人でいいのだから》読書感想:『夕風の桔梗』(小説すばる 2020年 6・7月号 [雑誌])

小説すばる 2020年 06・07月合併号[雑誌]

 

『言の葉は、残りて』佐藤雫さんの新作が読み切り短編で登場。

 

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生真面目で人と接するのが苦手な武士・晴光。

想いを寄せた女性から放たれた態度や言葉に、その心は傷ついた。

そんな中、であったのは、なんと娘に化けた狐(!)

 

狐との出会いと別れを通じて青年の心が昇華していく、ジュブナイル的テイスト物語。

 

『言の葉は、残りて』もファンタジー要素があったけど、本作はヒロインが狐、というこで要素はひろがり、おとぎ話のような雰囲気を醸し出している。

 

「ボーイ・ミーツ・ガール」の王道をゆく構成

上手く立ち回れない男の不器用さ

社会の許容のあり方を内包した問いかけ

 

短編ながらたくさんのメッセージが入っていて、考えさせられる一作。

 

デビュー作同様、柔らかな文調と、活き活きとした動き、そして随所で描かれる花の美しさが、晴光と狐に彩りを加えている。

 

人間とは捉え所がなく、わかり合えるための辛さや哀しさを乗り越えることを強いられる生き物。でも、乗り越えられない人はどうしたらいいの?という心の叫びは、現代でも暗い影を落とす要素。

 

一度女性に断られた。

狐には騙されまい、と思った。

でも 騙されながらもその心に触れたことで、人ではない存在を我が事のようにかばう。

「恋だとしたら、何が悪い」

思うままを言葉にしたとき、きっと晴光は変われた。

それが、別れにつながる一言になったのだとしても・・・

 

ラスト、高陽川のほとりで物語は終わる。

人間と狐の恋は、この先どうなるのだろうか? 希

望も絶望も匂わせた結末ではあったが、またいつか、二人(一人と一匹)が逢えると思いたい。

 

小説すばる 2020年 06・07月合併号[雑誌]

小説すばる 2020年 06・07月合併号[雑誌]

  • 発売日: 2020/06/17
  • メディア: 雑誌
 
言の葉は、残りて

言の葉は、残りて

  • 作者:佐藤 雫
  • 発売日: 2020/02/26
  • メディア: 単行本
 
言の葉は、残りて (集英社文芸単行本)

言の葉は、残りて (集英社文芸単行本)

  • 作者:佐藤雫
  • 発売日: 2020/02/26
  • メディア: Kindle版
 

 

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読書感想:『布武の果て』 第四回(小説すばる 2020年 6・7月号 [雑誌]) ~取るべき道は魔王と相乗り! 御用商人の目利きの行方~

小説すばる 2020年 06・07月合併号[雑誌]

 

 

信長が畿内を安定させたことで、商いの賭けに勝った今井ら堺商人三人衆。

彼らは御用商人となり、信長の依頼に基づいて物資の調達に走り回る。

 

ちなみに、魚屋(千宗易)は茶道を通じて光秀と関係を深めていく。これ今後の大きなポイントになりそう。

 

しかし、楽勝と思われていた朝倉征伐が、浅井の裏切りによりまさかの失敗。

織田軍団は敗走し、これにより堺への三好の逆襲が懸念され、反信長派商人が御用商人三人衆に詰め寄ってくる。

おまけに、因縁深き尼崎(摂津)が城主・池田や荒木と共にまるまる寝返るという事態が発生。

ここぞとばかりの意趣返しの連鎖で西側は反信長色が強くなる。

 

ほら見たことか、と反信長派(三好派)が三人の元へ乗り込んできて、舌戦になるシーンは現代でも見られる光景。

堺の命運を担う選択をしただけにその評価は過程ではなく結果でしか見てもらえない。

 

しかし、例え状況が厳しくても直感や感情、雰囲気で判断してはいけない。

織田の財力、鉄砲の重要性、何より信長のリーダーシップの優位性を見極めたからこそ、変わらぬ織田優勢を確信する今井。

コスト目線(意識)で見て、鉄砲の方が有名武将よりも安上がりで効果が高い、と見て取るあたりが商人発想(ここらへんが信長と相通じるところ)

 

※奇しくも同雑誌において『塞王の楯』で(別視点ではあるが)鉄砲の意義についての記載があった。時代は違うが、この武器が日本の歴史を変えた存在であることを、二つの作品を通じて改めて実感

 

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結果、浅井朝倉から逃れ、再度出兵した織田軍は浅井朝倉、三好らを蹴散らす。

(姉川の戦いを数行でさらっと終わらせるあたり、近年の研究が反映されている)

 

これで大丈夫、と思ったら本願寺決起という予想外の事態で堺孤立!

これはさすがにヤバいやつだ・・・

 

小説すばる 2020年 06・07月合併号[雑誌]

小説すばる 2020年 06・07月合併号[雑誌]

  • 発売日: 2020/06/17
  • メディア: 雑誌
 

 

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読書感想:『剛心』 第八回(小説すばる 2020年 6・7月号 [雑誌]) ~その哀しみは希望になるか? ミナが見た妻木の日々~

小説すばる 2020年 06・07月合併号[雑誌]

 

 

広島臨時議事堂建設を経て、妻木は相変わらず新旧メンバーと共に忙しそう。

どうやら新しい役職・大蔵省建築掛長に就いたらしい(臨時でとっつけたようなネーミングに見えるのは僕だけか?)

 

舞台は再び東京へ。

今回は妻木の妻・ミナ視点がメイン。

育児も来客対応も真摯に切り盛りしながら、彼の力になろうとする思いが綴られたほっこり回。

 

穏やかで合理的

怒ることがめったになく表情が大きく動かない。

捉え所がなく、家事もだいたいのことが出来てしまう。

 

当初は自分の居場所に戸惑う夫との距離。

その後、両親を早くに亡くし、天涯孤独で生きてきた妻木が、失うことを恐れているのでは?と気付いたときから、支えになろうと決意した日々。

 

妻木が全てを話さないからか、空想の世界に入りがちで、他のことがおろそかになる天然?なところは微笑ましい。

だからこそ思い悩むのかもしれないし、妻木の理解者であり続けられるのかも。

 

妻木はこれまでの回でも、全てを自分で処理できる超人ぶりが目についてきたけど、だからこそ、彼は満たされていないし恐れている、という一面があるのが新鮮だった。

 

久しぶりに出かけた東京の街で出会えた大審院。

日本らしさを残そうとする妻木の思いに触れると同時に、ミナが感じたのは、変わりゆく光景への喪失感。きっと当時の東京(江戸)の人々はそんな戸惑いのなかにいたのだろう。

西洋一色に染まりそうな明治末期の東京、微かな抗いをみせていこうとする妻木。

この後、東京はどうなっていくのかなあ。

 

 

小説すばる 2020年 06・07月合併号[雑誌]

小説すばる 2020年 06・07月合併号[雑誌]

  • 発売日: 2020/06/17
  • メディア: 雑誌
 
新選組 幕末の青嵐 (集英社文庫)

新選組 幕末の青嵐 (集英社文庫)

  • 作者:木内 昇
  • 発売日: 2009/12/16
  • メディア: 文庫
 

 

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読書感想:『塞王の楯 第十一回』(小説すばる 2020年 6・7月号 [雑誌]) ~矛と楯の決戦へ “矛”彦九郎は描く 抗える未来のために~

小説すばる 2020年 06・07月合併号[雑誌]

 

 

新たなる戦乱の匂い

それは、理不尽な悲しみがない未来のための戦い。

民の涙をぬぐうのは

矛か、楯か。

――――――――――――――――――――――――

伏見城での戦いから始まる、矛と楯の最終決戦。

 

攻める気持ちを喪失させる絶対の楯か

苦境に抗える力を民に与える至高の矛か

 

技を極めた二つの技能衆が激突する。

 

今回、もう一人の主軸・彦九郎の視点がついに導入。

どんなにスキルを高め、どれほどの時間を費やしても、鉄砲の弾一つでその日々を無に打ち砕ける現実がそこにあった。

父の最期を見たからこそ、虐げられる弱き存在のための“矛”を作る、と心に決めた。 (奇しくも、同号で掲載されている『布武の果て』でも鉄砲導入の意味と変化についての言及があった。そっちは金が名将に勝るコスト面での優位性、って観点だったけど)

 

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戦国時代とは、大名(武士)同士の争いに民が巻き込まれる時代でもあった。

そこで力がなく抗えない時代を変えようとした彦九郎、うーん、敵キャラとは言い切れない・・・

さらに意外と匡介のことをしっかり認めているあたり、当初抱いていたイヤな奴度は薄まった気がする。

もっとも、抑止力の観点では正しいけど、みんながある程度の力を持つことによる未来、って、決していいものとは言い切れない。

やってることは死の商人だしなあ。

 

間違いないのは、戦乱が矛と楯を育てた、ということ。

場が経験を生み、技術の進歩となっていき、大きな渦となっていく歴史の体現者として、二つは、新たな競い合いの場にたとうとしている。

 

“楯”の先頭に立つため、伏見城に入る源斎。

攻め手との籠城戦を通じて、守り方の分析や改善点を匡介に送るためだ、って言ってるけど、この試み、どう考えても分が悪すぎて悪い予感しかしない(涙)

小説すばる 2020年 06・07月合併号[雑誌]

小説すばる 2020年 06・07月合併号[雑誌]

  • 発売日: 2020/06/17
  • メディア: 雑誌
 

 

じんかん

じんかん

  • 作者:今村 翔吾
  • 発売日: 2020/05/27
  • メディア: 単行本
 

 

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チンギス・ハン誕生! 読書感想:『チンギス紀 第三十八回』(小説すばる 2020年 6・7月合併号 [雑誌])

小説すばる 2020年 06・07月合併号[雑誌]

 

 

民族統一どころか、当初はバラバラで本人は弟殺しで逃亡していたんだよな。

隔世の思い。 思えば遠くまできたもんだ(涙)

 

儀式のシーンはおごそかな雰囲気。

テムジンは人に推され、神によって認められて、ハンを名乗る。

認められるから、みんなから祝福されるのだ。

今じゃ形式的なもの、という意識がつきまとうけど、選ばれるってことは尊く、その過程を見届け体験するということも、必要なステップなんだ、と今さらながら思う。

 

これにより、テムジン、いやチンギスはより大きな国の象徴となった。

(作品でもこれ以降、テムジンとチンギスと表記していく)

 

その反面(北方作品だとこの手の展開は)下り坂の始まりになることがあるので、今後がいさかか不安になってくる(汗)

実際、領土の拡大により兵力や人材は不足気味な感じがあるし、敵は減ることなく、どんどん増えていく。金と西夏が同盟を結ぶ気配があるようだけど、そうなったらとんでもない規模の国が相手になるんだけど、大丈夫なのか?

 

そして、ジャムカは姿をみせないながら、どこかで一撃必殺の機会をうかがっている。 気がつくと、チンギスの気がかりとして大きな存在になっているのが、描写から感じ取れる。

 

一方、南のタルグダイ夫婦が南で大暴れしたり

アインガが倦んでいたり

ジャカ・ガンボが西へ放浪の旅に出ていったり。

 

どんどん世界が拡がっていくなあ。

 

それぞれの人生のシーンも見逃せない。

負けた男たちのドラマ、どういう決着を見るのだろうか。

 

そして山籠もりのトクトアの基にマルガーシが・・・

この出会い、何をもたらすのか。。。

 

それにしても、タルグダイを治療した後はマルガーシ。

この森がチンギス紀版の子午山的ポジションになってきたな・・・

 

 

小説すばる 2020年 06・07月合併号[雑誌]

小説すばる 2020年 06・07月合併号[雑誌]

  • 発売日: 2020/06/17
  • メディア: 雑誌
 
チンギス紀 八 杳冥

チンギス紀 八 杳冥

  • 作者:北方 謙三
  • 発売日: 2020/07/15
  • メディア: 単行本
 

 

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読書感想:『空海の風景〈上〉』 (中公文庫) ~イノベーター・空海とは何者だったのか?空海を探る司馬さんの脳内追体験~

空海の風景〈上〉 (中公文庫)

 

 

平安時代初期。

日本の宗教史において(日本史そのものにおいて)得がたき二人のリーダーが現れた。

厳しい修行と懐深き学びの場をつくることで日本宗教界の母なる地を生みだした最澄

人智を越えたその明晰さと異次元の発想であらゆる事項のイノベーターとなった空海。

 

努力型と天才型(という分け方でいいのか自信は無いが)

リーダーの理想たる姿を体現したかのような二つの存在によって、日本の歴史は大きな軸を得て、中世・近世へと進んでいく。

そして二人の功績は、宗教だけではなく文化、思想など幅広い分野に及んでいる。

今なお、二人が創設した文化財(比叡山・高野山)に国内外から多くの人が訪れ、何度も足を運ぶその魅力はどこにあるのか。

 

最澄と空海に対する研究や取り組みは今でも行われているが、一時特に注目されたのが空海。

彼の残した膨大な書物やロジックは異次元過ぎて本人しかわからないものが多く、それでいて実践方法は平易だと言われている。

煩悩をなくす修行として知られている座禅が、空海(真言宗)座禅では煩悩を吐き出すことが目的となっていて、「阿(あ)~~~」と声を出す形式になっているあたりからも、この独特ぶりが覗える。

(この「阿~~」座禅は「阿字観」と呼ばれ高野山で体験することができる。体験するとスッキリするので機会があればやってみてほしい)

 

達筆さ、文章力の高さ、発想力、構想力、そして分析力。

どれをとっても余人及ばない才能を持ち、身一つで真理を得て、新しい流派を立ち上げ、誰にでも愛されたとされる空海。

日本の宗教史、いや、日本の歴史に名を刻むイノベーターと言われる所以だ。

 

これほどの存在にあの方が着目しないはずがない。

そう、司馬遼太郎だ。

 

生死を超えた悟りへの努力を修行とした最澄とは異なり、肉体ある内に悟りが開けるとした数々の文章と理論、達筆文章に天才的センス、と持ち合わせながら、それでいて愛されるキャラクターという快男児ぶり。

坂本龍馬、千葉周作、河井継之助に通じる、いかにも司馬遼太郎が好きな人物像だ。

『空海の風景』では、あまりにも独自理論過ぎて余人の理解が及ばない空海の頭の中を、司馬さんがあれこれヒネリながら解き明かしていく。

元々司馬作品は小説というよりはほぼエッセイに近いのだが、本作も例に漏れず、というか他の作品以上にエッセイ要素が多く、司馬遼太郎の空海探偵のような文調を楽しむことが出来る。

 

さすがに1000年近く前の人物であり、史料が少ない上に私見入りまくりのものまで使っていくために想像要素多め。

司馬さん自身も少しずつ足場を固めるように文章内で検証と想像を繰り返していく。

構想から完成まで相当の時間がかかった作品らしいのだが、それでも空海を知ることができる喜びが伝わってくるような楽しげな文面なのが特徴。

上巻は唐へ渡ったところまで。 いよいよこの後、真理を得た空海が帰国して、本当の活躍が始まる。

下巻も楽しみだ。

 

空海の風景〈上〉 (中公文庫)

空海の風景〈上〉 (中公文庫)

 

 

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