モーション・グリーン

ブログ開設14年目!今年も「紡ぐ」発信を目指す読書・アニメ・特撮感想ブログ。

北方水滸伝 名言集6

「下っ端の役人まで腐っているが、悲しい腐り方なのだ」                       魯智深  林沖を救出せよー  宮廷の上級役人 李富の罠にかかり、牢獄に入れられた林沖。心の奥底で愛していた妻に死なれながらも、志を胸に耐え続けたきた。  林沖を見捨てるわけにはいかない。林沖が別の牢城へ護送される所を狙って、魯智深は金と怪力を駆使し、無事奪還に成功する。  お互いの無事をたたえ合いながらも、もう戻らないものの大切さを噛みしめる林沖。そんな彼に、魯智深は現在の同士達の状況を説明しながら、新たな任務を伝える。心に空隙を抱えた林沖は、振り切るかのように任務に没頭することになる・・・

 その一方で、林沖は金さえ握らせれば白にも黒にもなる役人の姿を嘆いた。嘆きながらも、そうせざるを得ない下級役人がいることに、また嘆いた。その林沖の気持ちに対して、魯智深が語った言葉が、今回の名言だ。

 確かにこの宋末期。世の中は腐っていた。宮廷は自分たちだけを栄えさせることを考え、役人は秩序よりも保身を優先し、盗賊は先の見えない強盗と殺戮を繰り返し、結局泣くのは名も無き民ばかり。

 しかし、役人の側にもそうせざるをえない背景があった。彼らにも家族がいて、家族のためにお金を稼がなければならなかった。彼らは上の役人から目を付けられぬよう、盗賊に襲われないようにしなければならなかった。生きるのに必死だったのだ。役人もある意味、弱者だ。だが、弱者からはい上がれない鎖を、組織という檻の中で付けられているのだ。

 結局、目の前の役人を打ち倒したり、民を潤わせたところで世界は何も変わらない。世界に君臨する壁を壊さない限り、民の・役人の嘆きが無くなる日は来ない。同情しながらも、さらなる決意を持って、林中は任務に挑む。

 役人のことに触れて、ぼくは山上憶良を思い出した。「貧窮問答歌」で有名な彼は、当時の役人の中で決して低い身分ではなかった。しかし、彼の目の前にいる民を救ったところで変わらない。鳴き声と嘆き声を産み出す元は、我々朝廷と、私のような役人なのだということを、憶良はわかっていたのだろう。だから、せめて後世に民の生活を伝えようと、この歌は作られたといわれている。その真偽はともかく、そこには、ある意味矛盾した思いを抱えた、一役人の苦悩が出ているように感じた。果たして今の世の中は、憶良の・民の嘆きが届いた世なのかどうか、ふと考えてしまった。

 水滸伝(1(曙光の章))