韓成の反発、秦容の覚醒、そして呼延凌ら武官の心の叫び 梁山泊だけではなく、楊令にも大きな転換期が訪れたことを感じさせる三十二回。
◆楊令の自覚
今回、韓成の己への反発に気付いたり、秦容の覚醒ぶりに目を見張ったりと、楊令が他者の変化に目を留めて、己と比較をしたり自分の考え方を確認したりと、自身を見つめ直すような場面が出てきたのは大きなポイント。
変わったとはいえ、楊令が絶対的実力を持ったリーダーであり、他者のつけいる隙を与えようとしないのは変わっていないだけに、そのスタイルでこの先もいいのか?という指針にはなったはず。
実は、楊令が以前宣言した多数決民主主義国づくりの形からすれば、楊令のような絶対的な実力を持つ頭領はミスマッチなんですよね、帝のような専制国家ならピッタリなんですけど。その観点でいけば楊令自身が(それこそ己の見られ方を自覚することなどで)変わらなければ、楊令自身が目指す国づくりができない、何より楊令が示し続けるしかない国しかできあがらないんですよね。
楊令に欠点があるとすれば、そこにあるのかも。
韓成の微妙な反応や秦容が見せるしなやかさが‘個性’につながれば、梁山泊の層は一段と厚くなるのになあ。今回加わった欧元を楊令がいかに育てるか、というところもポイントのひとつかも。
秦容に関しては、ただの将校を飛び越えて、楊令ら第二世代の新たなリーダー像になりうるかも、と期待。誰にも劣らない圧倒的な実力を身につけようとした楊令に対し、人によって己を使い分けられる柔軟さを持つ秦容。この違いはそのままリーダー論にもつながるだけに、梁山泊合流後の秦容の活躍に期待。
あとは、呼延凌だろうか
「俺たちの牙を、抜かないでください」には宣賛ならずともドキッとしてしまった。
楊令が目指す国づくりには、呼延凌や武官が不要になるかもしれないという要素を孕んでいることを、改めて思い出した。また、これまで掲げてきた梁山泊の他領不可侵の方針に、実は同意しきれていないメンバー(見えない声を含めて)が存在することを再確認。呼延凌も花飛麟も、偉大な父は戦いでしか越えられない壁。目に見える目標(宋打倒・童貫撃破)が無くなったことで、個々の内なる感情が主軸になっている今の現状って、実は崩壊の序曲なんじゃないか、と危惧しているのですが・・・
◆その他
・楊令と耶律大石の会話は読み応えあった。これまでの金の戦略が改めて語られたことで序盤の流れが再度確認できた。阿骨打の戦略が見えてきたことで、楊令と二人で描いてきた戦略がどこで狂い、今の形が当初の流れとどう違うのかがより明確になったのは大きい。
・金VS岳飛軍の激突。久々に一級指揮官同士の戦いが見られてテンションが急上昇





◆楊令伝 六
◆楊令伝 七
◆楊令伝 八


