文庫版改めて読了。
やはり、三国志は孔明の死で終わったんだなあ。
英雄無き世界は、もはや波乱も奇跡も起きづらい場所になっていく。
そしてそれは、姜維が夢見た舞台が、もう訪れないことの証でもあった。
よく姜維は侵攻ばかり考え政治をおろそかにした、とか、
戦術はともかく戦略は孔明には及ばない、とか言われている。
そりゃそうだ。
彼が願った世界は孔明や仲達たちがいて、初めて成立する世界なのだから。
強敵を味わうことが出来た空気のなかにいたからこその自分。
そして、自分が保てないかのような生き様しか自分に課せなかった麒麟児。
それは彼だけではなく、魏にも、呉にもいた。
そして彼らは示し合わせたかのように己を解き放ち、そして成熟していく世界から拒絶されていく。
だからこそまぶしくもあり、切なくもあった。
単行本版でも思った。
これは『姜維伝』とあるが彼だけの物語ではない。
英雄達と共に生ききれなかった者たちが魅せた、残光の物語である。