約100年続いた戦乱の世、戦国時代。
勢力拡大にどの家も存亡をかけたに違いない。
だが、それ以前に、生き残ることが困難な時代でもあった。
たとえ英邁なリーダー(君主)が現れても、次代が引き継げるに足りる器でなければ、かえって滅亡への道を早めるだけ。
どの家も長続きするかどうかは二代目と三代目にかかっていた。
(近年では京都におけるエリート家系だったことが明らかになったが)土地とゆかりのない血筋ながら勢力を拡げ、戦国時代の関東を理想郷に変えた一族・後北条家は、最高の後継者を得た。
目立たないが礎をきっちり造った二代・氏綱。
それを引き継ぎ、信玄・謙信・義元という戦国時代のトップスターと渡り合いながら、独特の国をつくったのが関東の獅子・三代氏康だ。
当時、他に類を見ない領土経営手法に注目が集まっているにも関わらず、彼の一代記は意外と少ない。
そんななか、新書で読めるのが本書、結構貴重だ。
後北条氏作品を数多く手がける伊東さんと歴史ライター・板嶋さんがタッグを組んだ本書は、学術系単行本に引けを取らない充実した内容。
これで氏康の生涯と後北条家の魅力、さらには暗愚と言われている子・氏政の適正な評価言及もされている。
タイトルは氏康、とあるが後北条家全体の俯瞰もできるオススメな1冊だ。