織田信長という男は、物語映えする男。
最近、ふとそんなフレーズが浮かんだ。
人物像としても、その人生としても、その頭の中、時代背景、悲劇性、カリスマ性などなど、いろんなものを持っていて、断片を拾っても、広く浅くまとめても、きちんと「信長」にたどり着く。
それでいて、既視性がありながらマンネリが薄く、ぶっ飛んだ設定でも受け入れてしまう。まさに物語映え、である。
つまり、信長という人物は本人目線よりも他者目線で見る方が、おもしろい(かもしれない)。
もし、それを見抜いていたのだとしたら、天野純希という作家は、やはり新進気鋭の
名にふさわしい方に違いない。
信長に人生狂わせれたり、影響受けすぎた方々の短編集。かなりマニアックな方が多いが、それほど構えること無く読める。信長は実際にはほとんど登場しない、それが故に恐ろしくもすさまじいその存在が浮き彫りになる、想像力をかき立てる構成だ。短編の中には、やや強引な展開の話もあるのだが、そこは歴史小説の秀英・天野純希、全体のバランス作りがとにかく素晴らしく、後味すっきりで読み終われるので、終わりよければ~な気持ちにさせてくれる(笑)信長とは何だったのか、今度は信雄や有楽斎も読んでみたいなあ。
第一話 義元の呪縛
第二話 直隆の武辺
第三話 承禎の妄執
第四話 義継の矜持
第五話 信栄の誤算
第六話 丹波の悔恨
最終話 秀信の憧憬