「あ~ありそうありそう」と言ってしまう、名将達の若き時代の片鱗。
近年の歴史小説は長編もさることながら、短編も読み応えがある。
短い(少ない)スペースで完結させなきゃいけない難しさはあるものの、凝縮された物語は中だるみしづらく読みやすい。
そして大胆な設定やぶっ飛んだラストなど、読後感が千差万別になるおもしろさ。
そう
短編は作者の腕の見せ所であり、ある程度の“チャレンジ”が受け手と作り手の間で許容される空間なのだ。
ちょうど最近、伊東潤さんの読書会で『短編の極意』(?)なるプレゼンが伊東さんがお話しされていて、その体系化された要素と、体系化した伊東さんのきまじめさ(笑)に圧倒されたのだが、まさにそれを具現化したような作品に出会えた。
名将達の始まりを描いた本作は、著者・宮本さんのアイデアが光る、他の作品とはひと味違う初陣物語。
史実と俗説の狭間で浮かんでいるエピソード。最近じゃ俗説、とバッサリ採用されていないところを。宮本さんはうまーく盛り込んで、物語を大きく膨らませていく。
まさに史実と創作のコラボ短編集!
自分にしては珍しく(笑)どの作品もオススメなのだが、
強いて言えば信長の短編と家康の短編。
信長編は本人と言うより、実母VS乳母の愛憎?劇
その構成と結末に唸ってしまった。
家康編は薬マニア家康誕生の秘密(爆)。薬にこりまくる家康に大笑い(爆)
情報が随時更新され、どんどん史実が変わっていく。
史実前提でどんどん変わっていく人物像も大事だけど、史実を下敷きにして、僕らと引っかかっていく人(物語)を、僕たちは読みたいのではないだろうか。
そんなことをふと思う。
◆鳥梅新九郎
◆さかしら太郎
◆いくさごっこ虎
◆母恋い吉法師
◆やんごとなし日吉
◆薬研次郎法師
◆ぶさいく弁丸