遙か昔、自分は裁判を傍聴したことがあった。
きっとその日は(いや、その日も)事件を、罪の実態を明らかにする 長い過程の1シーンだったんだろう。
自分は、本当はそもそも、その部屋に入る資格すらなかった人間だった。
けど、そんなことを考えず、後学のために入ったその部屋は独特の緊張感、重苦しい空気で満たされていた。
ここで人が裁かれるという思いが、にわかに自分を縛り付ける
身体が言うことを聞かず、息すら吸っていいのか、吐いていいのかわからなかった。
今考えると妙な気分ではある。
でも、これが裁判(公判)なんだ、ということははっきりとわかった気がする。
本編の公判、同じように、いやそれ以上に、独特の雰囲気のなかにあったのだろうか?
いよいよ始まった公判で、様々な駆け引きがあり、人の本性があきらかになっていき、もはや真実云々より自分の命と未来を守るための場となっていく。
真実よりも保身を。罪の深掘りよりも今(明日)の我が身を。
鮫島が思っていた尊き精神性は、罪の行方へと消え去っていくのか?
命の価値は?真相の究明は?
信念を貫こうとすればするほど追い込まれていく鮫島に光明は差すのか?