若者を脅迫する社会、「できる人にならなくては」という幻想に、少しでもブレーキをかけることができたらと思っている。
『はじめに』に書かれたこの一文に、この本の意義が詰まっている。
苦しんできた方々には、勇気が高まる1冊だろう。
でも、この本を読んで安心しちゃいけない。
幻想の先にあるのは、何にも守ってももらえない“自分”
“自分”は果たして社会に価値があるのか、存在できるのか。
根本的な、そして(もしかしたら)幻想に包まれた社会よりも厳しい現実が、目の前に現れる。
ごまかせないリアルに打ち砕かれるかもしれない。
そんな“劇薬”が配合された本であることを、貴方は気付いているだろうか?
本書自体は、日本社会が提唱している「あるべき姿」の実態を分析検証している。
正直、その結果は、衝撃を受けたなあ。
巷で言われている「今の日本」や「これからの日本」を、言葉だけで納得しちゃいけない。
「グローバル化」って、何のこと?
「起業」するって、そんなに偉いこと?
実は、言葉やイメージが先行していて、実態が言うほどではなかった、ということも紹介されている。
良く言えばこれからの日本に必要なこと、ってことなんだろうけど、もうすでに進んでいるよ、ということについての是非は、数値を見れば明らか。
目指せ、って空気に引っ張られ、勉強したり調べたりしていた自分たちは何だったのか?
そんな声が聞こえてきそうな内容だ。
実際、著者は『あとがき』で、若者のせいにしないで、中高年がもっと日本を引っ張っていくことを強く主張している。
(「若者への説教離れ」という表現は、個人的に結構好きだ)
実態が色々書かれている本書だが、やる気を無くしてもいけない。
社会のメッセージとその実態が見えた今、その空気に従う必要はないのだ。
むしろ、未だ定まっていないのだから、自分はどうするか見つめ直すきっかけにしなければ。
そんな内なるエネルギーが湧く1冊だ。
と言いたいところだが
実は
隠されているのは「じゃあ、君はどうする?」という一番厳しいメッセージではないか、というのが読み終えた感想。
この本、結構スパルタだ。
一見すると、若者を無根拠の内容で持ち上げている中高年への強烈な批判で、本書は幕を閉じている。
でも、(ある意味)擁護された若者は、どうしたら良いのだろうか?
部分部分でその解答になりそうな言葉は挟まれているが、それほど響く内容はなかった。
「自分で考えろ」くらいの突き放しすら感じさせる。
中高年はあてにならない(極端な言い方になるが)
社会のメッセージも怪しい
じゃあ、そんな中で自分は何をして生きていく?
いや、そもそも、自分は何ができるのか?何がしたいのか?
教えてくれそうな“他者”は、どこにいる?
丸裸にされた若者の行く先に、日本の将来がかかっているのかもしれない。

「できる人」という幻想 4つの強迫観念を乗り越える (NHK出版新書)
- 作者: 常見陽平
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2014/04/09
- メディア: 新書
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