ただの功名心だった。
武士になりたい、手柄を立てたい。
そのためなら、と引き受けた陰武者奉公。
しかし、主人公・二宮杏之助を待っていたのは・・・
第三の陰武者、完結編。
主君の代わりに奮闘し、主君を連れて逃げようとする杏之助。
しかし、“陰武者”としての自分から、“自身”へ目が行ってしまったことで、運命の選択をすることに。
その選択が、歯車の中の誤差範囲でしないことを知らずに。
その後はがんじがらめに運命を操られ、戻ることも退くこともできない日々が続く。
主君のまま武士として生き続ける。 その選択は正体がバレることですぐに破綻。
傀儡としての生き地獄の中、希望が生まれては失われ、事態が好転したかと思えばさらなる闇へ。
かえるべき故郷も、待っている人も、戻ってみたら自分が居続けられる場所ではなくなっていた。
何者でもなくなった杏之助に、武士の世は歯車の部品としての存在価値しか提示しなくなっていく。
目の前の邪魔な存在が消えても、巨大な因果は杏之助に安息を用意しない。
誰が悪い、ということでなく、ただただ、歯車は回り続け、抜け出すことは叶わない。 これだけ救いがない展開も珍しく、ラストに至っては目を覆ってしまった。
これ、生きていたのが幸せだったのかどうか・・・
陰武者に待つ悲劇のラスト、救いが一切ない物語だ。