「いつの日か、わしは、そなたを殺すことになるかもしれぬ。それでもよいのか」
「構いませぬ。その時は、殿下も豊臣家も破滅することになりますから」
文庫版再読。
やはり、秀吉と利休との関係の崩壊は、予期していたとはいえ驚きと冷たさが同時に来たなあ。
振り返ると、利休に携わった人の多くが、その後の人生を大きく変えた。
茶の湯という新たな文化に触れたことで、人が今までと違う顔を見せたのだから、天下の事業としては大成功、なのだけど・・・
利休に人生を狂わされた者
勘違いしていた者
そして、道を間違えた者・・・
当たり前だけど、人は人によって変わる。
でも、いい風に変わるとは限らない。
その悲喜こもごもが、切ない・・・
人の人生に大きな影響を与えながら、自らの野望のために人を巻き込んだ利休は、ある意味相当罪深いとも言える。
でも、影響を与えた当の利休も、人との出会いで飛躍し、最後は破綻した。
(本人がそう思って逝ったかどうかは定かではないが)
そして最後は秀吉が破綻し、豊臣家はこの世から消える。
誰も笑顔にならない結末はやはり寂しいなあ。
利休とは、何だったのか?
結局、その疑問が、漠然と頭の中にこびりつく。
日本人の精神に宿る、茶の湯の文化が、この超人的で俗人でもある利休発なのだとしたら、、そのルーツ(利休の内面)を見なければ完結しない。
かけ違えることが予想できていた利休は、なぜこの道を選んだのか?
そこが見えてこないと、誰も浮かばれない。
伊東版千利休が、どこかで読めればいいなあ。
(と言ってたら、来年利休を描いた作品が出るらしい)