お笑いコンビ・オードリーの若林のエッセイ集。
タイトルには「人見知り」とあるが、どちらかというと我欲(といっても小心からくる自己顕示に近いけど)の方が正しいかも。
まるでヒットしなかった下積み時代から、近況、相方の話などなど。
こんな内面(変すぎる)こだわりもってる人間いるんだなあ、と最初はヒキながら(笑)読んだ。
だが、次第に風向きが変わる。
ネガティブな内面は自己顕示の裏返し。
趣味がないのは、俯瞰から見てしまっているから。
などなど、「わかるーーーー」なエピソードが続いていく。
一番好きなのは
自分に自信がつくと一人で生活ができる。一人で生活ができるようになってやっと人と付き合える。
という悟り。
巷で言われている「自信を持とう」というエールよりはるかに胸に刺さる。
人は、その人の見た目を見て、その人のことを判断している(見た目は九割というし)。
でも、見た目を通して、その人の“自信”を見ている。
相方の春日を通じて得られたこの気づき、大きいなあ。
やったことがない(やろうと思わなかった)コトの中に、自分にとっての気づきがある。
難しい方を選ぼう、と自己啓発本に書かれていることって、こういうことなのかも。
エッセイは終盤で自分自身を振り返っていく。
自分がどう変わっていったのか、セリフツッコミだらけの振り返りは結構面白かった。
どうでもいいこだわりの中に真理があって、自己分析があって、段々自分という存在の定義が文章の中に言葉として現れてくる。
エッセイって、変化が見えるからおもしろい。
若林のように、拠り所が欲しかった人は、この時代たくさんいたのかもしれない。
昭和から平成において存在していた社会成功ルートは骸化され、生き方が選べるけど、報われるかどうかまで誰も約束してくれない。そんな風潮が今になって、活性化しない社会として具現化し始めている。
お笑い芸人の(一昔前までは共感できた)成功物語は、今やストーリー化され、消費財になっている気がする。
若林は産みの苦しみを味わった一人なのかもしれない。
さて、令和はどうなるんだろうなあ。