「情報」とは何か。
情報社会といわれている現代ではあるが、その存在は明確ではない。
それは発生源としても、発信源としても、誰もが生み出すことができる。
生まれたその力は人を活かすことも潰すこともできる。
そして、それを制したものが、世界を制する。
効果を知っているからこそ、「情報」を求め、利用した者が大きな成果を出してきた。 生死をかけて、武将達がしのぎを削ってきた戦国時代も例外ではない。
彼らが扱ってきた「情報」によって、世界は大きく変わり、武将達の生き様は喜劇にも悲劇にも変わっていく。
短編の名手・伊東潤が描いた連作短編集の最新刊は、その「情報」がテーマだ。
どちらかというと、歴史小説の情報モノというと、流されたり、利用される悲劇ベースのものが多いが、本書は自分を取り戻したり、生ききったり、という陽の物語も盛り込まれているのが大きな魅力。
大事なのは情報を主体的に扱い、受け止めること。
愚か者も知恵者も誠実者も、伊東さんが「情報」から生じたその人間模様を、一作一作キレキレの論調、かつヒリヒリする展開を描いている。
重い結末の中に希望を見いだせる読了感が心地よい1冊。
歴史小説ファンなら読むべき作品だ。