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〈これは“教科書”じゃなくて“強化書”だ〉読書感想:『戦国の教科書』

甲冑武士が手を挙げている表紙。

裏表紙では、坊さんも南蛮人?も女性もみんなで授業。

 

なんだか和気あいあいとした雰囲気。

 

加えて「戦国の教科書」というタイトル。

ビギナー向けなのかな、と思って開いてみる。

 

見事に騙された(笑)

玄人をも唸らせる短編が収録された、ガッツリクオリティなアンソロジー本だった。

 

 

戦国の教科書

 

 

そのテーマについて書かれた短編集に始まり、テーマ解説、テーマを学べるブックレビューという構成が本書の特徴。

 

合戦や武将の倫理感といった、時代を感じ取れるおなじみものから、海賊や合戦作法など、馴染みの薄い(でも重要な)テーマも取り上げており、どのカテゴリーからも新たな気づきがある。

 

日本史(歴史小説)初心者が入るにはやや難しいかもしれないが、飛び込んだらやみつきになる魅力を存分に感じ取れるはず。

 

意外と?おもしろかったのが、テーマ後のブックレビュー。

司馬遼太郎や吉川英治といった、かつての国民的歴史小説作家作品から遠ざかっている方々は、今の作品の充実ぶりとその変化に驚くに違いない。

 

「俺は(私は)この作品で育ってきた」っていう背景はもちろん尊重すべきだけど、近年の歴史研究はどんどん進んでいて、それまでの常識(と思っていたものごと)は次々に覆されている。

 

鎌倉幕府成立は1192年、はもはや教科書から消えており、近年では1185年が有力。

楽市楽座を始めたのは信長ではないし、一代で下克上を果たしたとされてきた斎藤道三の業績は、親子二代で行ったこと、というのが今や通説化。

 

過去のことだけど、歴史はどんどん変わっているのだ。

その息吹を新進気鋭の作家たちが存分に取り入れた短編、読み応え抜群だ。

 

■下克上・軍師  

『一時の主』矢野隆

 

厳密に言うと“下克上”といっても戦国時代初期と末期とでは微妙に意味合いが違うが、内包するものは変わらない。

 

【実力本位】だ。

 

権威や権力ではなく、力(才覚)で世界を変えられること。

これこそが、戦国時代を生み、多くの英雄達がしのぎをけずった要因。

 

後世から見れば統一するのがゴールと思ってしまうが、そんな風に思えなかった人は相当数いたはず。関ヶ原合戦時の黒田官兵衛は、まさにそうだったのだろう。

 

家康と三成との激突から外れ、九州で一旗あげた彼の真意と思いとは?

そして、子供・長政はなぜ東軍(家康側)に味方したのか?

 

下克上の終わりを描く一作だ。

 

※もう少し詳しい感想をnoteに書きました。

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■合戦の作法  

『又左の首取り』木下昌輝

 

功名をたて、実力でこの世を渡る。

戦国武将に私たちが抱いているイメージは、多少の差こそあれ、上記のような姿、で外れてはいないだろう。

腕力、技術、智謀、機略

人間が持つスキルをフル活用して、命を燃やし尽くすエピソードに、私たちはあこがれやカッコ良さを見る。

 

しかし、殺し合いの世、だからこそ必要な「礼」があった。

「礼」があるから、人は獣ではなく、人でいられる。

 

後に加賀100万石の藩祖となる前田利家。

腕っ節一つで織田家武闘派としての活躍を続けていた若かりし時。

とある出会いを通じて知った、戦いに必要なもの、とは。

 

イメージで作ってしまっていた“戦国武将”を見直すきっかけになる一作だ。

 

※もう少し詳しい感想をnoteに書きました。

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■海賊  

『悪童たちの海』天野純希

変わり種の一作。

 

陸に居場所を失った一人の武士。

もし、行く宛がないのなら、俺と海に出よう!という誘いから始まる海の物語。

ここだけ読むと、某海賊王を目指すマンガのようだ(笑)

 

戦国時代に限らず、海を題材にした物語は、不思議とぼくたちを惹き付ける。

縛られない生き方をしたい、という根源的な欲求を、なぜか海の住人は体現する。

海に囲まれた国のはずなのに、陸に意識が向く日本人の意識を覚醒される魅力を、本作では再確認。

 

政治が縛っても縛ることのできない海。

本作に登場する人物が軒並み実在の人物、というのも驚き。

 

難しいコンセプトを短編内で“生き様”として昇華させる。

さすが天野さん!

 

※もう少し詳しい感想をnoteに書きました

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■戦国大名と家臣  

『鈴籾の子ら』武川佑

 

 

土地のため、麦のため、そして誇りのため。

新発田重家は、上杉景勝を裏切り、新発田の地で独立する。

 

周辺勢力と程よい強力関係を持ち、上杉軍が来れば巧みな采配で圧倒していく。

 しかし、天下の形勢が固まり、重家の戦いは故郷を守るどころか、作り上げてきたものを壊すことにつながると悟る。

 

「来年の刈り入れが終わるまで、待ってくださいませぬか」

 

守りたかったものは何か。

そしてそれは、実るのか。

 

故火坂さんを彷彿とさせる、美しく泥臭い稲穂の風景描写が切なさを誘う物語だ。

※もう少し詳しい感想をnoteに書きました

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■宗教・文化  

『蠅』澤田瞳子

 

世界史ほどではないが、日本史にも宗教との分岐点があった。

 

100年続いた、加賀一向一揆
信長最大の敵として抵抗を続けた石山本願寺。
そして、キリスト教。

 

もしかしたら、日本にも大きな宗教国家が生まれるかもしれなかったのだ。

人の心の支えとなり、行動の原点となる可能性を秘めた“信教”

それはいつかし、統治者の地位すら脅かす存在となっていく。


しかし、天下が定まるにつれ、その立ち位置は変化していく。

豊臣秀吉によって進められた大仏造り。
そこに求められたのは、天下(権力)のための仏教だった。権力なくしては成り立たなくなった仏の道は、いつしかその役割が変わっていく。

仏の道と、権力との関係。
その狭間で二つの顔を持たざるを得なかった仏僧の物語。

 

宗教とは

仏とは

そして救いとは。

 

救世の根本を問う一作だ。

※もう少し詳しい感想をnoteに書きました。

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■武将の死に様  

『生滅の流儀』今村翔吾

ラストを飾るのは、松永弾正。
今村翔悟さんが、謎に包まれた前半生を見事に創り上げ、ものすごくカッコいい久秀が放たれた。
きっと、松永久秀の今後のスタンダードになりそうな雰囲気を醸し出す一作。

 

守るものがあるがゆえに“阿呆”になっていく武士。
失うものがなく、残すつもりがないから、とらわれることなく前に進める。

下賎の身から兄弟で育ち、絆と才覚で世に躍り出た松永兄弟。
彼らを見出した三好家は、四国を拠点に畿内へ大きな影響力を持つようになり、どこよりも『天下』に近づいていく。
しかし、いつしか守りに入っていき、徐々に後退へ。
しまいには内側でも勢力争い、外には対抗勢力が勃興。

 

兄弟が願った未来は、実現することはなかった。
それでも、天下に名を残す思いは消えることはなく、久秀は手を伸ばし続ける。
「悪名も名でござろう?」
自分の人生に最後までこだわりと誇り、そして哲学を忘れなかった久秀。
こういう生き方をしてみたい、そう思わせる作品だ。

 

※もう少し詳しい感想をnoteに書きました。

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戦国の教科書

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