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ブログ開設14年目!今年も「紡ぐ」発信を目指す読書・アニメ・特撮感想ブログ。

読書感想:『辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦』~ 歴史認識の解像度が上がる1冊~

辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦

 

 

座談会(対談)本ってたいていはおもしろくない。

要約になっていたり、お互いの意見をなぞっただけ、で終わることが多いからだ。

 

けど、この本は違う。

周りを気にせず、お互いの知識や見識をノーガードでぶつけていく。

あるとき、波長がピタリとハマる。生まれる知的ユニゾン。

 

どこかで観たことあるなあ、と思っていたら

 

コレ、読書会だ。

 

しかも、僕にとって理想の光景じゃないか。

 

スタート(課題本)こそあるものの、自然と会話はあっちいったりこっちいったりしながら、結論へと進んでいく。

ときに確認しながら、ときに脱線しながら。

すんなりいかなかったからこそ、その場所その時間だったからこそ、二人の中で生まれた結論は、唯一無二の輝きを放つ。

 

ちなみにこの本は前作があるのだが、未読から入っても全く問題なし。

歴史研究本流では扱わない本を題材にして、歴史の実態が次々と浮かび上がり、素朴な疑問が思いも寄らない結論へと二人を導いていく。

そして、通り一遍な本や知識ではみえてこない深層へ。

 

文献根拠前提での歴史解釈での限界が明示されたり

より人間という生物の本能からくる行動の共通点から、歴史疑問解決のヒントがみえてきたり

大勢という名の歴史押しつけによって埋もれてしまった、独特の文化と人間の知覚本質の真実が確認できたり

 

と、これまでぼやっと通過してきた色んなコトがこの本でスッキリする。

科学も、人文学も、知覚学も取り入れて、歴史学はさらにその姿を鮮明に出来る!

まさに“語り直し”の時がきたのかも。

ワクワクするなあ。

 

■第一章:『ゾミア』

他文明や文化、技術が入り込んでくると、自然と世界は一つになっていく(近づいていく)という、これまでの歴史概念が覆る1冊。

場所によっては、その人たちによっては、"未開"に戻ろうとするところがある。

そして、昔はもっとおおざっぱに、未開の地を「辺境」とみていたのではないか、という仮説から、ミニマムで普遍的な世界の深層がみえてくる。

最初から刺激的なやりとりが繰り広げられている。

 

■第二章:『世界史の中の戦国日本』

今や、日本史だけで、日本のことを知ろうとしては井の中の蛙。

世界から見て日本はどうだったのか。日本は世界の一部としてどう変化していったのか。

学問的なことは難しいけど、論点だけは知っておきたいなあ、という方は必読。

 

■第三章:『大旅行記』

旅行記やエッセイがお好きな方は、この本を「読みたい本」リストに入れておこう。

すさまじい長さらしいが、それだけに得られるものは他書と比較にならないことになりそう。

ちなみに、このジャンルだとマルコ・ポーロ著書が有名だが、お二人から言わせると記述が素朴というか幼稚らしい(苦笑)

 

■第四章:『将門記』

ハッとさせられるコメントがたくさん。

これもやはり物語。バランスを考えたりつじつまを合わせるために、どんどん脚色されキャラ変されたものを、僕たちは当たり前の(完成品としての)作品として読んでいるのだなあ。

古代から、人間はそうやって読みやすくわかりやすいものを意識していた。でも、それが史上の人物像すら形作ってしまったと知ったら、昔の人は「そんなつもりはなかった」と言うのかな(笑)

 

■第五章:『ギケイキ』

こちらも前章の気づき同様の要素が満載。

義経の人物像が大きく変わるやりとりがおもしろすぎる。ちなみにお二人が盛り上がっていた『頼朝の武士団』はホントにおもしろいから、図書館でも古本でもよいので一読を推奨。

 

 

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頼朝の武士団  ~将軍・御家人たちと本拠地・鎌倉 (歴史新書y)

頼朝の武士団 ~将軍・御家人たちと本拠地・鎌倉 (歴史新書y)

  • 作者:細川 重男
  • 出版社/メーカー: 洋泉社
  • 発売日: 2012/08/04
  • メディア: 新書
 

 

■第六章:『ピダハン』

コミュニケーション能力が求められる現代。

でも、共通言語(文字・記号など)がないからこそ、伝わったり、途絶させられたことがある。そしてそこから、独特の文化が創られていく。

知らないから縛られない。

それを無知とか練度が低い、と果たして言えるだろうか?

繋がってしまう今だからこそ考えたい議題だ。

 

■第七章:『列島創世記』

歴史調査(エビデンス主義)・そして史料前提研究の限界。

人間は誰でもごまかすし、主観が大半だ。そこに書かれたものに、後世の研究家がどれだけの真実と実態が託しているか、当時の人は考えてもいないに違いない。

だからこそ、歴史を知り、事実を正確に把握することは難しい。

そこに異なったアプローチを加えようとしている領域の紹介が、今回のテーマ。

 

「一次史料がなければ、史実とは言えない」

こんな言葉が、言われなくなる日が来るかもしれない。

 

■第八章:『日本語スタンダードの歴史』

・三国志の時代、劉備と諸葛亮は筆談で会話していた。

・古代から中世にかけて、日本国内でも筆談や通訳が必要だった。

 

大河ドラマや歴史小説で当たり前のように会話しているシーン、あれ実態は出来るわけがない、ってケース結構多い。

今ですら、西日本と東日本とで、聞きづらい方言残っているところあるのがその証拠。

 

では、日本における共有言語(若干語弊があるが)はいつから広まったのか。

この回のやりとりは目から鱗の要素がホントに多くてメモ多かった。

他にも文法や表現技法の変遷なども語られており、言語学としても興味深い。

 

まだまだ知らないことが多い日本と世界のコト。

こういうところに次の時代へのヒントが眠っている気がしてきた。

 

 

辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦

辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦

  • 作者:高野 秀行,清水 克行
  • 出版社/メーカー: 集英社インターナショナル
  • 発売日: 2018/04/05
  • メディア: 単行本
 

 

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