「桶狭間で負けた名家」
「油断して首を取られたお歯黒大名」
織田信長飛躍の踏み台イメージから、今でも抜け出せない今川家。
だが、「海道一の弓取り」の名の通り、この家は当時の日本の中で間違いなくずば抜けた実力を持った大名だった。
検地や楽市制度、分国法など、最先端の施策を進めていたという研究も発表され、有識者の間での評価は巷とは全く異なるようだ。
その一方で、意外と研究が進んでいないということが、本書で明らかに。
これも、“敗者”の悲しさか(涙)
どうしてもイメージ・勝者先行になりがちな日本の歴史研究。
その中で、今川家にスポットをあてた研究本がこの1冊。さすがは洋泉社!
読んでみると、そもそもの今川氏系図に関する疑問や、国衆との関係、さらには内政や外交など、ほぼ全ての分野で未開拓のところがたくさんあり、まだまだ新しい発見の余地を感じる。
ただ、不明点が多いため、本書前半はストレスがたまるかも。
その後の中盤~後半は三河・尾張の領土攻防話しが中心。
今川視点でこの経緯を見るのは結構貴重だったので新鮮。
特に今川・武田・織田の勢力拡大と敵対の変遷が、信長の野望を彷彿とさせるバランスで成り立っていたことが書かれており、当時の境界線周辺領主の緊張感が伝わってくるようだった。
かなりマニアックな内容ではあるので、玄人以上の方推奨(笑)