応仁の乱終焉から、各地で有力者が自治に動き始めた戦国時代。
それまで領地をおさめていた大名の権威が失墜し、新たな存在がその地位につく。
戦国大名と後に呼ばれる実力者は、ときに周囲と同盟を結び、ときに領土を拡張し、わかっている者は内政にも力を注いだ。
そんな戦国大名を取り上げる際によく出てくる存在が法律だ。
自治を確立するために、決まり事を定め徹底させる。
分国法と表される法律は大名ごとに内容が異なり、考え方や特色を知るのに有効なツール、と見られていた時期があるそうだ。
ところが実際の分国法を見てみると、想像以上に形式も意味合いもバラバラ。
内容も法律なのか、指針レベルなのか、当主の愚痴なのかわからないものも・・・
後半の文書には愚痴が並んでいる結城家
当主が出すのではなく、家臣から「この決まりを守れ」と突きつけられた六角家
法律としては当時の最高峰のものを作り上げた今川
そして滅亡直前までバージョンアップした武田など、分国法から、当時の価値観がみえてくる名本。
タイトルだけみると難しそうな印象を受けるかもしれないが、清水さんのわかりやすくちょっと茶目っ気のある表現、そして何より必要なところだけ大胆に抜粋・要約した編集力が見事すぎて、分国法はもちろん紹介された戦国大名への愛着まで湧いてくる。
もちろん戦国大名好きが読んだら、ますます知的好奇心がかき立てられること、間違いなし。
ラストの織田や徳川、後北条などの有力大名になぜ法がないか、という理由にも触れており、衝撃の結論が述べられている。
目から鱗の見識を是非確かめて欲しい。