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読書感想:『歴史其儘と歴史離れ(Kindle)』~史実とフィクション、その狭間にいた作家の結論~

歴史其儘と歴史離れ

 

 

作家・谷津矢車さんが年初に必ず読んでいる森鴎外のエッセイ。

実は原文が読みづらく(その時代のものとしては平易なんだと思うけど・・・) 、わがままと思いながらも読みやすいものを探していたのだが、kindleで発見。

それでも読みづらいところがあるが、大意は十分掴める(短いのでさらっと読める)

 

森鴎外が感じた歴史(時代)小説の難しさ。

それは“歴史(時代)を題材にした作品を作る”ときに生じる求められる史実(ファクト)

そしてそこに創意工夫を入れていくことで生じる“減液効果”

 

史実みてるとおかしいな、と思いながらも、その疑問や想像力を創意で埋めてしまっていいのだろうか、という苦悩。

このジャンルが確立していない時代、鴎外はその息苦しさに気付いたらしい。

 

この命題は、その後数多くの小説家によって議論されつつも、さじ加減次第というところで線引きがされている。今でもSNSをはじめ、有識者や読者の間で話題となっている案件だ。

鴎外時は(現代ではそれほど意識されないが)○○主義、××主義、と文学が分類された時期だったから、その線を気がついたら越えていたことへの驚きもあったのだろう。

 

ちなみに鴎外は本文において、この難題をこう結論づけている。

わたくしは又現存の人が自家の生活をありの儘に書くのを見て、現在がありの儘に書いて好いなら、過去も書いて好い筈だと思つた。(本文より)

 

この答えを、後の小説家たちは取り入れていった。

文豪と呼ばれた小説家や、司馬遼太郎や吉川英治ら巨匠が、作品内に“自分”(第3者目線)を登場させるのは、『歴史其儘と歴史離れ』との境界線に自らを置き、その矛盾?と違和感を補完しようとしていたのではないか。

そして“自分”を通じて、メッセージや思いを吐露していった。

それらが名作となって読み継がれているのは、本質的に読者がその答えを受け入れていったから、と読むこともできそうだ。

 

そう考えると、歴史(時代)小説の読み方もずいぶん変わる。

史実だ創作だ、というところであーだこーだ言うのがばからしくなってくる。

 

読者こそ、この命題に誰よりも向き合うべき存在ななのだから。

 

示唆に富んだ1冊。

 

 

歴史其儘と歴史離れ

歴史其儘と歴史離れ

  • 作者:森 鴎外
  • 発売日: 2012/09/28
  • メディア: Kindle版
 
森鴎外全集〈14〉歴史其儘と歴史離れ (ちくま文庫)

森鴎外全集〈14〉歴史其儘と歴史離れ (ちくま文庫)

  • 作者:森 鴎外
  • 発売日: 1996/08/22
  • メディア: 文庫
 

 

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