戦国時代、鉄砲のプロとして信長を恐れさせた雑賀孫市(孫一という表記もみる)
実在する人物ではあるのだけど、実態はよくわかっていない。
そもそも、下の名前も重秀・重朝など諸説あり、時代も戦国時代中期から末期にまで生存史料があるためそれぞれ別人という話しもよく聞く人物だ。
というところを突いて、“雑賀孫市”を名乗る者は3人存在した、という谷津さんの創意が光る一作。
雑賀という特異性をみせるところからスタートする本作は、兄弟三人が鉄砲と出会ってしまい、その特徴と己の特性とがマッチングしてしまったことで、役割分担しながら名を馳せていくが、織田信長との対立をきっかけに、運命が狂っていく・・・という展開へ。
正直、雑賀という馴染みづらい土地柄要素の描写が染みこみきれていなかったり、義方が軍略を極めていくところが省略されていたり、逆に深めるべきシーンがあっさり終わってしまっていたり、など、チョイスがかみ合っているとは言えず、うーん、ってなってしまうところがあるのが残念。
その反面、キャラクター設定や鉄砲性能への遊び心など、ライトノベルチックな中二病要素(笑)が満載。
細かな視点チェンジのおかげで臨場感たっぷりな兄弟対決は読み応え抜群だ。
最期に生き残ったのが○○というのも、史実上との整合性を考えると大正解。
歴史好きならニヤリとしてしまうところ。
バトルを楽しみという要素でいくなら読んで損無し。歴史小説初心者でも入りやすい作品だ。