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読書感想:『千年の松』(小説現代 2020年 4月号 [雑誌]) ~決断に必要なのは、感性か理性か。細川幽斎運命の一瞬~

小説現代 2020年 4月号 [雑誌]

 

 

本能寺の変前後、理性と感性との間で揺れ動く細川幽斎を描いた短編。

細川幽斎(藤孝)と言えば、戦国時代の中でも一級の文化人でありながら、数々の武勇伝が伝わる、著名な戦国武将。

まさに二物を与えられた漢だ。

 

彼の目の前に現れた“自分が滅ぼした名家”の御曹司・一色五郎。

人質として理性を押し殺している(ように見える)五郎との駆け引きの中で、幽斎は唄を入り口とした感性の世界での交流を試みる。

現世での出来事から解き放たれる空間での、想いを込めたメッセージ。

目に見えないつながりによって、五郎と幽斎は定められたものとは違う関係を築けるかと思われたが・・・

 

 

 

本作は特に“静”の描写が秀逸。

“句を考えるとき、景色が一切消える”

“五・七・五(七・七)を世界のすべてとして、言の葉で埋め尽くす”

などシビれる表現が幽斎と同じ感覚へと読者を引き込んでいく。

そこにあるのは、感性に身を預けることで、『自分らしさ』を確認している幽斎の姿。 そして目の前の出来事より自分の感性へ意識が向きがちな幽斎を、現実に引き戻す明智光秀。 いいコンビに見えたのに・・・

 

待ち受けるは、本能寺の変。

光秀謀反の後の幽斎の判断が一瞬で、きっと他の人には理解されないだろうなあ。

(きっと、感性で決めて、理性が後から理由を付けていくタイプなのだろう)

だからこそ、子・忠興らが戸惑いながら怒りを露わにする。

 

そして、五郎との別れ。

感性という共通言語でつながりあえた風景や松が血で汚される現実が、幽斎を暗澹とさせていくラストは、何とも言えない切なさ。

 

ホントは本能寺の変における幽斎の決断に至る物語に読み応え欲しかった。

作品全体としても理性パートがやや弱いのが残念。

 

しかしそれも武と智、二物を持つ戦国の巨人・幽斎の底知れぬ大きさがあるが故。

この後も、決断を誤ることなく生き残っていく幽斎。

やはこの人物は魅力的だ。

 

小説現代 2020年 4月号 [雑誌]

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  • 発売日: 2020/04/01
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