桶狭間前年、信長が訪れた京都は戦火で規模を縮小した、衰亡の都だった。
応仁の乱から政争の渦中にあった京都。
どんな時を経て、信長にその姿を見せていたのか。
本書によると、実は僕たちが知る京都の枠組みは秀吉(豊臣政権)以降に出来たもので、それ以前の概要(都町の規模や位置など)を示す史料は限られてくるらしい。
その少ない史料と今に残る京都の道名・街名の由来などから、応仁の乱後の京都の実態を明らかにしたのがこの本だ。
内裏のすぐ側まで麦畑だったとか
狭い地域での町同士の対立、自衛と自治の状況
応仁の乱から進まない復興
そして信長との対立
などなど、見えてくる歴史の側面が満載。
天皇や公家が困窮していたことは知られているところだが、それを取り巻く町はもっといびつで複雑だったようだ。
こう見ていくと足利義昭反乱と、それによる信長の京都焼き討ちが京都に住む人々の反感を買っていたことが、文脈から察せられる(民は内裏に避難していたらしい!)
信長といえば、軍の統率を厳格に行い、朝廷や市民を安心させたという話がある(本書でもその点は取り上げており、略奪を行った事例はほぼ皆無だったらしい)
だが、堺の事例がある通り、寛容というわけではなく、“自分たちの生活を守る”者ではない、と市民や町民がみなしたことは想像されるところ。
本能寺が守りを固めた信長の宿泊所となったことも、好感を持たれていないことの裏返しだったのかも(そうなると、本能寺の変の少ない手勢が謎のままだけど・・・)
歴史はやはり様々な視点からみないと実態は見えてこない。
見識を深める意味でも読んで損無しの1冊だ。