モーション・グリーン

ブログ開設14年目!今年も「紡ぐ」発信を目指す読書・アニメ・特撮感想ブログ。

読書感想:『空海の風景〈上〉』 (中公文庫) ~イノベーター・空海とは何者だったのか?空海を探る司馬さんの脳内追体験~

空海の風景〈上〉 (中公文庫)

 

 

平安時代初期。

日本の宗教史において(日本史そのものにおいて)得がたき二人のリーダーが現れた。

厳しい修行と懐深き学びの場をつくることで日本宗教界の母なる地を生みだした最澄

人智を越えたその明晰さと異次元の発想であらゆる事項のイノベーターとなった空海。

 

努力型と天才型(という分け方でいいのか自信は無いが)

リーダーの理想たる姿を体現したかのような二つの存在によって、日本の歴史は大きな軸を得て、中世・近世へと進んでいく。

そして二人の功績は、宗教だけではなく文化、思想など幅広い分野に及んでいる。

今なお、二人が創設した文化財(比叡山・高野山)に国内外から多くの人が訪れ、何度も足を運ぶその魅力はどこにあるのか。

 

最澄と空海に対する研究や取り組みは今でも行われているが、一時特に注目されたのが空海。

彼の残した膨大な書物やロジックは異次元過ぎて本人しかわからないものが多く、それでいて実践方法は平易だと言われている。

煩悩をなくす修行として知られている座禅が、空海(真言宗)座禅では煩悩を吐き出すことが目的となっていて、「阿(あ)~~~」と声を出す形式になっているあたりからも、この独特ぶりが覗える。

(この「阿~~」座禅は「阿字観」と呼ばれ高野山で体験することができる。体験するとスッキリするので機会があればやってみてほしい)

 

達筆さ、文章力の高さ、発想力、構想力、そして分析力。

どれをとっても余人及ばない才能を持ち、身一つで真理を得て、新しい流派を立ち上げ、誰にでも愛されたとされる空海。

日本の宗教史、いや、日本の歴史に名を刻むイノベーターと言われる所以だ。

 

これほどの存在にあの方が着目しないはずがない。

そう、司馬遼太郎だ。

 

生死を超えた悟りへの努力を修行とした最澄とは異なり、肉体ある内に悟りが開けるとした数々の文章と理論、達筆文章に天才的センス、と持ち合わせながら、それでいて愛されるキャラクターという快男児ぶり。

坂本龍馬、千葉周作、河井継之助に通じる、いかにも司馬遼太郎が好きな人物像だ。

『空海の風景』では、あまりにも独自理論過ぎて余人の理解が及ばない空海の頭の中を、司馬さんがあれこれヒネリながら解き明かしていく。

元々司馬作品は小説というよりはほぼエッセイに近いのだが、本作も例に漏れず、というか他の作品以上にエッセイ要素が多く、司馬遼太郎の空海探偵のような文調を楽しむことが出来る。

 

さすがに1000年近く前の人物であり、史料が少ない上に私見入りまくりのものまで使っていくために想像要素多め。

司馬さん自身も少しずつ足場を固めるように文章内で検証と想像を繰り返していく。

構想から完成まで相当の時間がかかった作品らしいのだが、それでも空海を知ることができる喜びが伝わってくるような楽しげな文面なのが特徴。

上巻は唐へ渡ったところまで。 いよいよこの後、真理を得た空海が帰国して、本当の活躍が始まる。

下巻も楽しみだ。

 

空海の風景〈上〉 (中公文庫)

空海の風景〈上〉 (中公文庫)

 

 

にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村

 


読書感想ランキング