『言の葉は、残りて』佐藤雫さんの新作が読み切り短編で登場。
生真面目で人と接するのが苦手な武士・晴光。
想いを寄せた女性から放たれた態度や言葉に、その心は傷ついた。
そんな中、であったのは、なんと娘に化けた狐(!)
狐との出会いと別れを通じて青年の心が昇華していく、ジュブナイル的テイスト物語。
『言の葉は、残りて』もファンタジー要素があったけど、本作はヒロインが狐、というこで要素はひろがり、おとぎ話のような雰囲気を醸し出している。
「ボーイ・ミーツ・ガール」の王道をゆく構成
上手く立ち回れない男の不器用さ
社会の許容のあり方を内包した問いかけ
短編ながらたくさんのメッセージが入っていて、考えさせられる一作。
デビュー作同様、柔らかな文調と、活き活きとした動き、そして随所で描かれる花の美しさが、晴光と狐に彩りを加えている。
人間とは捉え所がなく、わかり合えるための辛さや哀しさを乗り越えることを強いられる生き物。でも、乗り越えられない人はどうしたらいいの?という心の叫びは、現代でも暗い影を落とす要素。
一度女性に断られた。
狐には騙されまい、と思った。
でも 騙されながらもその心に触れたことで、人ではない存在を我が事のようにかばう。
「恋だとしたら、何が悪い」
思うままを言葉にしたとき、きっと晴光は変われた。
それが、別れにつながる一言になったのだとしても・・・
ラスト、高陽川のほとりで物語は終わる。
人間と狐の恋は、この先どうなるのだろうか? 希
望も絶望も匂わせた結末ではあったが、またいつか、二人(一人と一匹)が逢えると思いたい。