モーション・グリーン

ブログ開設14年目!今年も「紡ぐ」発信を目指す読書・アニメ・特撮感想ブログ。

読書感想:『断片的なものの社会学』〜無意味とされるこの世の欠片から、今が見える〜

 

断片的なものの社会学

 

 

 

犬が死んだ。

 

事実はこの一行で済む。

 

気に留めなければ、きっとどこかで起きていること。

意識しなければ、とりとめのないことと同じ扱いで、この出来事はみんなの耳を通過していく。

 

しかし、この本の著者・岸さんはインタビュー時に突然聞いたこの事実が忘れられなかったという。

 

どんな犬だったのか

どう葬られたのか

飼い主は悲しんだのか

 

唐突だったからこそ、その場の流れに不釣り合いなその一言に、思いを巡らす。

 

頭の中で予想・想定していなかったことを、僕たちはその時の文脈や雰囲気に合致しないと意識の外に放り投げる。

 

だけど、それは確かに存在した。

 

題材にもネタにもなりづらいまま、それらは社会の片隅で起きている。

人によってはこれらを些細なことと割り切る。

他の人に伝えようとしても、広がりがない、と切り捨てられる。

それを、本書では『無意味な断片』という。

 

なのにひっかかり、しばらくサビついて離れない。

 

 

出会いが大切と唄いながら、それはときに暴力になる。

赤の他人と親切、うまく引けない境界線が、人を傷つける。

 

明確な答えが出せず、理屈付けて納得させてきた。

けど、その中に無限の物語があり真実がある。

 

よくあること、で終わらせず、それらを本書で著者が拾っていく。

その事実を描写しながら答えのない疑問を問う。

 

線引しようとすることが安易と知る。

自分にとって異質なことだから、受け付けず目を背けてはいないか、と問う。

安全と思っていたことが間違いだったり、一夜にして定説が覆る世界だからこそ、起きている事実を知って認識する。

そして、簡単に割り切れないことを自覚し、何かが自分に欠けている(足りない)ことを知り、結論を出すことを求めすぎてはいけない、と戒める。

 

これからは、そういう過程を経ていかなきゃいけないのかもしれない。

 

例え答えが出なくても、理解しようとすることを終わらせない。

 

今を知る。

未来のために必要なことを教えてくれる一冊だ。

 

 

断片的なものの社会学

断片的なものの社会学

  • 作者:岸 政彦
  • 発売日: 2015/05/30
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

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