※本書は文庫版の大活字本verを読んだ感想です。
内容は文庫版と同じなので、文庫本表紙も一緒にあげておきます。
茶の湯を繋いだ人たちの物語。
後編は江戸時代以降の茶人を追っていく。
パトロンが付いたことで、茶の湯は幕府御用達の流派だけではなく地方でも開花。
戦なき太平の時代となり、その時期が安定していくと、茶の湯が果たした役割は少しずつ変化していく。
忠臣蔵の決め手となった吉良上野介の茶会
享保の改革の敏腕老中が愛した茶器収集
大老として幕府を支えようとした井伊直弼が培った茶の湯の精神
茶の湯は、趣味・娯楽・アフターファイブの楽しみ(笑)といったサブカルチャーとしての価値はもちろん、職務では満たされない自分の思いや、登城先では発揮できない本当の自分、といった個々の特色を見出すという意味でも大きな位置を占めていたことがわかる。
歴史のメイン筋ではないけれど、人間ドラマとしては濃厚だ。
特に注目したのは以下2つ
・無駄遣いで藩の財政を著しく悪化させたが、今日に至る松江の茶文化を作り出した不昧侯。
・茶の湯を通じてオスマン・トルコとの架け橋になった山田寅次郎
※本当に偶然だが、この日から配信が始まった『コテンラジオ』オスマン・トルコ編と被るところが出てきて驚いた。
文化発展にはお金が必要で、文化を広めるには伝道師が必要になるところは変わることがない。
その時代に生きたひとにとっては価値が分からなかった(むしろ迷惑だった?)ことでも、引き継がれた精神が、今日の社会の一つとして体現されていったのだ。
何が、いつ、価値を生むかわからない。
人間の行為の素晴らしさを知るのは、いつの世においても歴史の醍醐味だ。